■ジェネレーションギャップ

 ベトナムは人口9300万人の半分以上が30歳未満で、そうした若者たちの間では人間関係の規範が急速に変化している。多くのカップルが結婚前に同棲したり、結婚後にはマイホームの購入よりもアパート暮らしを選択したりするようになってきている。

 妊娠中絶の件数も増加傾向にあり、2017年には届け出が出されたものだけでも30万件に上った。だが今でも妊娠中絶が不名誉とされることには変わりはない。

 しかし結婚式となると、今でも大勢の若者たちが家族や社会――特に超保守的な高齢者たちからの「伝統を守れ」との計り知れないプレッシャーを受けている。

 フオン(Huong)さんとボーイフレンドのクアン(Quan)さんが偽の結婚式を挙げることになったのもそのせいだ。

 クアンさんの家族は、貧しい省出身ということでフオンさんを嫌っていた。一方、フオンさんの両親は占い師の助言に従い、酉(とり)年の内に結婚式を挙げろとせっついていた。

 そこでふたりは、フオンさんの故郷で偽の結婚式を挙げることにした。

 花嫁側の招待客は本物だが、花婿側は父親、母親、おじ、おば、友人のすべてがレンタルした人々だ。見え透いた茶番だが、クアンさんは彼らの献身は本物だと語る。

 クアンさんは式の後、「偽の式でもあり、同時に本物でもあります」とAFPに語ったが、両親の自身の結婚への期待を将来どうやり過ごすかについては慎重な構えを見せた。

 レンタルしたおじが大勢の招待客を前で行ったスピーチで、クアンさんが育った場所を間違えてしまうハプニングもあったが、結婚式はおおむね滞りなく進んだ。

 式が終わってほっと一息と言いたいところだが、クアンさんはこれからも実の両親にこの秘密の結婚式を隠し通さなければならない。