ファッション史に変化をもたらしたジバンシィとヘプバーンの友情
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【3月16日 AFP】ファッションデザイナーのユベール・ド・ジバンシィ(Hubert de Givenchy)と女優のオードリー・ヘプバーン(Audrey Hepburn)の友情は、ファッションの歴史において最も美しいものだった。
しかしこの友情は危うく築かれなかった可能性も含んでいた。
今月12日に91歳で死去したユベール・ド・ジバンシィは以前AFPに対し、1953年に初めてヘプバーンに出会った時、彼女の衣装作りを断ったと語った。しかしヘプバーンに誘われディナーを共にしたジバンシィは瞬く間に彼女に魅了され、その大役を引き受けた。
「オードリーは、映画『麗しのサブリナ(Sabrina)』のためのドレス制作を依頼しに私のところへやってきた。しかし、私は彼女のことを知らなかった。(女優の)キャサリン・ヘプバーン(Katharine Hepburn)が来ると思っていた」とジバンシィは振り返った。
2年前、オランダ・ハーグ(Hague)のハーグ市立美術館(Gemeentemuseum)で開催された二人の友情を題材にした回顧展「To Audrey with Love(オードリーへ、愛を込めて)」のオープニングでジバンシィは、「初めて会った時の彼女は優雅で、若々しく、陽気で、少女のようだった」と話した。「彼女はコットンパンツにバレリーナシューズ、おへそが見えるTシャツ姿で、手には麦わらのカンカン帽を持っていた」
前年に自身のブランドを立ち上げたばかりだったジバンシィは「とても映画の重要な役割を持つ衣装を作れるような状態ではなかった」と語り、女性裁縫師が足りないことを理由に断ったという。
しかしヘプバーンは彼の答えを受け入れず、ジバンシィをディナーへ招待した。「当時、しっかりとした家の出の若い女性が取る行動としては非常に大胆だった」。
■最後のプレゼント
ヘプバーンの2歳年上だったジバンシィは、ディナーが終わるころには彼女に魅了されており、仏パリにある自身のスタジオに次の日の朝来るようにと伝えていた。「彼女に説得されてしまった。引き受けて本当に良かった」とジバンシィはAFPに対し話した。
映画『麗しのサブリナ』でヘプバーンは、「ジバンシィ(Givenchy)」のアイボリー色のドレスに黒い花モチーフの刺しゅうを施した一着を着用。これはその後の映画史に残る一着となった。
ヘプバーンはそれ以降、自身が登場する作品の衣装をジバンシィに依頼するようになった。『麗しのサブリナ』が公開された1954年、『ローマの休日(Roman Holiday)』でアカデミー賞(Academy Awards)の主演女優賞を受賞した際にもジバンシィが手掛けたドレスを着用した。
「オードリーのスタイルは他とは違うシルエットで、その時代らしいものだった」と、彼女が1993年に亡くなるまで衣装を担当したジバンシィは語る。
二人の友情は、服に基づくものだけではなかった。そしてジバンシィは、「彼女が好きで着るもの」以外の服を着るように説得したことはないと話した。
ヘプバーンはかつて、「私自身でいられる服はジバンシィのものだけ。彼はクチュリエ以上の人で、パーソナリティーのクリエイター」なのだと、亡くなる直前まで彼女の側にいた友人に話していた。
ジバンシィはヘプバーンの晩年、彼女にネイビーのキルト風コートを渡し、こう伝えた。「悲しい時はこれを着て。そうすれば勇気を貰えるから」(c)AFP/Sophie MIGNON