【3月14日 AFPBB News】LEDライトを浴びてきらめくツマグロザメやメバルの群れ、人の背丈ほどもある月下美人の花々。直径1ミリもないタンポポの綿毛などガラス細工のように繊細な手業が紡ぐ生き物の世界は、なんとペットボトルから始まった。アーティスト本間ますみ(Masumi Honma)さん(50)の手は、まるで現代の錬金術師かのように、資源ごみを精巧なアート作品によみがえらせている。

 本間さんが考案した「ペットボトル・ソフィストケイティド・アート(PET Bottles sophisticated Art)」は、自然界にある植物や昆虫、魚などをペットボトルのみを使って原寸サイズで作るのが特徴。リサイクルの一環として始めた創作活動だったが、今では沖縄県や茨城県など国内各地の博物館で展示されるまでになった。

 

本間ますみさんがペットボトルから作った昆虫や花(2018年3月3日撮影)。(c)AFPBB News/Yoko Akiyoshi

■佐渡島が育んだ自然観

 きっかけは12年前、「エコ」をテーマにしたツリーのオーナメント制作を依頼されたこと。アルミ缶などを使い試行錯誤した結果、ガラスのように透明感があり丈夫で加工しやすいペットボトルにたどり着いた。その後も依頼は続いたが、当初は接着剤を使っていたため、展示後に作品が有料ゴミとして廃棄されることに胸が痛んだ。そこで、展示後も作品を資源として「再生」できるよう、接着剤や塗料を使わない工法に変えた。使う道具はもっぱら、ハサミ、はんだごて、ろうそくに紙やすりだ。

「周りの環境に気を留めてもらえるよう身近な風景や生き物を作っている」と本間さん。鳥や虫、魚が暮らす生態系そのものを感じてもらうために、ジオラマ展示にこだわる。

 新潟県・佐渡島の農家に生まれ、季節折々の草花やそれに群がる虫や鳥に囲まれる緑豊かな環境で育った。絵を描くことと自然観察が好きで、生物学者を志したが、美大へと進学。卒業後は博物館や水族館の展示設計に携わった。「すべての積み重ねが今につながっている」と本間さん。

水槽に見立てたボックス内のツマグロザメ(2018年3月3日撮影)。(c)AFPBB News/Yoko Akiyoshi

■「草の根」で募る協力者たち

 これまでに作った作品は、長さ15ミリのミツバチから4.8メートルのジンベエザメまで約100種類。図面をもとにペットボトルから型をとり、はんだごての温度を変えながら模様を描いたりパーツを組み合わせたりする。

 ジンベエザメには、1.5リットルのペットボトル約600本が必要だった。廃品業者に頼らず、すべて自ら声をかけた「ママ友」や近所の知人から1年半かけて集めた。「活動の裏テーマは『ポイ捨てをしない』という草の根運動。あくまでも家庭で出たごみを作品にしている」

 本間さんがアトリエを間借りする板金製作会社の横田康彦(Yasuhiko Yokoka)さん(63)も協力者の一人。「捨てるものだと思っていたペットボトルがあんなにきれいになるので意識も変わった。知人にも声をかけている」と話す。

 

集まったペットボトルをサイズごとに分類する(2018年3月3日撮影)。(c)AFPBB News/Yoko Akiyoshi

■新企画で日本の魅力を発信

 現在は、海外から多くの観光客が見込まれる東京五輪に向け、日本の里山を舞台にした民話「花咲じじい」をテーマにした作品に取り組んでいる。実物大の柴犬、満開の桜の木を完成させるには、気の遠くなるような細かい作業が必要だが、「イヌの毛ばかり作っていたら手が痛くて動かなくなった」と笑う。

 生物学者を目指した子どもの頃の思いを、風土と生物の姿を伝えるペットボトルアートにのせ、今日もハサミ片手に腕をふるう。(c)AFPBB News/Yoko Akiyoshi

桜をひと花ずつ作り枝ぶりを確認、いずれは1本の樹に(2018年3月3日撮影)。(c)AFPBB News/Yoko Akiyoshi