■国際比較研究の有用性

 研究チームは、米国の医療費がこれほど高額な理由をめぐる誤った定説を数多く指摘した。例えば、一般通念とは逆に「米国の医師受診率は他国に比べて低く、入院日数も少ない」と論文は指摘している。

 医療の質も、他国に比べて大幅に低いわけではない。米国は「心臓発作や脳卒中の患者の転帰は最良だが、糖尿病やぜんそくの患者の回避可能な入院については平均を下回っている」と論文は指摘している。

 また、国民の健康保険加入率は、他国の99~100%に比べれば低いが、90%だ。

 にもかかわらず、全体的な支出ははるかに高い。米国の2016年の保健医療支出は国内総生産(GDP)の17.8%に相当した。オーストラリアの保健医療支出はGDPの9.6%相当、スイスは12.4%だ。

 その一方で、米国の平均寿命は調査対象全11か国中で最も低く、78.8歳だった。他国の平均寿命は80.7~83.9歳だ。

 論文の主執筆者で、ハーバード大公衆衛生大学院・医療政策学部(Department of Health Policy and Management)のイレーネ・パパニコラス(Irene Papanicolas)客員助教は「米国は高額の保健医療支出に苦しみ続けており、コスト削減を推し進めることが不可欠だ」と語る。「世界の国々との比較は、非常に有益だ。国の達成度に関する省察を可能にすると同時に、説明責任の向上に役立つ」

(c)AFP