■「今回は本気」

 インドネシア政府は1月、地元政府から責務を引き上げ、廃棄物処理規定を無視する企業家に厳しく対処すると約束した。基準を満たさない工場に対しては、操業許可を取り消す処置もあり得るという。

 監視カメラを川沿いに設置し、目立たないよう早朝にゴミを廃棄する違反者を見張るほか、海洋省による浚渫(しゅんせつ)装置を使った清掃作業も検討されている。

 1980年代にジャカルタの東約170キロの小さな町、マジャラヤ(Majalaya)周辺に、新工業地帯が誕生し、それまで手付かずだったこの川に大きな変化が起きた。

 新設された約2000の繊維工場は切望されていた雇用を生み出したが、その対価は大きかった。政府と環境団体のデータによると、チタルム川には毎日約280トンの工業廃棄物が捨てられることになったのだ。

「雨が降ると家が水浸しになって、ひどい臭いがする」と、空き缶や発泡スチロールの容器、プラスチックボトル、ごみ袋などが一面に浮く川の上のゴムボートから取材に応じた村の住民アフマドさん(57)。以前は繊維工場の警備員として勤めていたが、会社の廃棄物処理システムについて質問したところ解雇されたと話した。

 地元環境団体Elinganのデニ・リスワンダニ(Deni Riswandani)氏は、「ほとんどの工場は廃棄物処理システムを持っているが、正しく機能していない。それはどれも形式的に設置されたものばかりだからだ」と語る。

 織物に使用した化学染料で泡立つ川には、工場の廃棄物が排水管を通して直接流れ込んでおり、周囲には悪臭が立ち込めている。

 こうした状況は、特に川の流域の住民500万人に深刻な健康リスクをもたらしている。多くの地元住民は疥癬や皮膚炎、また工場からの汚染された空気による呼吸器感染を患っているとされる。

 地元住民は政府の新たな目標が達成されることを切に望んでいる。しかし、その仕事の規模の大きさと、工場主が賄賂により問題を切り抜けるという昔ながらの汚職体質が根強く残っていることから、どうしても懐疑的にならざるを得ない部分もあるようだ。(c)AFP/Dessy SAGITA