【3月10日 AFP】英国で元二重スパイのロシア人男性が神経剤による殺害未遂の被害に遭った事件で9日、捜査活動を支援するために軍の兵士らが動員された。英メディアの報道によると、事件で使用された神経剤は、男性の娘がロシアから英国に持ち込んだものだった可能性が浮上している。

 4日に起きた同事件では、2010年のスパイ交換で英国に移住したセルゲイ・スクリパリ(Sergei Skripal)氏(66)と娘のユリア(Yulia Skripal)さん親子が、イングランド南西部ソールズベリー(Salisbury)の商業施設にあるベンチで意識を失っているところを発見された。

 英国防省によると、現場から「複数の車両や物」を撤去する作業のため、普段は閑静なソールズベリーに兵士180人が派遣された。警察当局は、「捜査の間、軍の支援は必要に応じて続く」と説明している。

 警察はまた、同市中心部から離れた場所にあるスクリパリ氏の自宅周辺に張っていた非常線を拡大した。英紙タイムズ(The Times)は、事件で使用された神経剤について、先週にモスクワから渡英していたユリアさんが意図せずに贈り物として持ち込んだものだった可能性があると報じている。

 当局が神経剤の出所の特定を急ぐ中、政治家らは、襲撃がロシアによるものであることを示す特徴があると警告。また、現場に駆け付けた警官が集中治療室に一時収容されるなど、英国の警官にまで被害が及んだことから、テリーザ・メイ(Theresa May)英首相に対して犯人の特定と処罰を求める圧力が高まっている。

 ロシアの関与が判明した場合、英国が取り得る対応としては、▽駐英ロシア外交官58人の一部に対する国外退去処分▽今年開催されるサッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会のボイコットまたは類似の措置▽東欧における英軍の増強─などが挙げられる。ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)英外相はロシア当局者らへの制裁を強化する案を示したが、実行するには協力国を説得する必要がある。

 一方、ロシア側は、同国政府が襲撃に関与したとの見方に反発。セルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)外相は9日、こうした主張は根拠のない「プロパガンダ」だと批判した。(c)AFP/James PHEBY