【3月9日 AFP】米海軍のミサイル駆逐艦「ジョン・S・マケイン(USS John S. McCain)」が昨年シンガポール沖でタンカーと衝突し乗組員10人が死亡した事故で、シンガポール政府は8日、事故原因は米駆逐艦の「急な針路変更」だったと結論付ける調査報告書を発表した。

 ジョン・S・マケインは2017年8月21日未明、海上交通の要衝マラッカ海峡(Strait of Malacca)付近の航路でタンカー「ALNIC MC」と衝突した。タンカー側に死者はなかった。

 シンガポール運輸省がまとめた35ページの調査報告書は、いずれかの組織・個人を非難するものではないと強調しつつ、駆逐艦乗組員に「数々の過失」があったと指摘するとともに、タンカー側の乗組員の対応も不十分だったとしている。

 シンガポール当局によると駆逐艦は、当直交代で乗組員に混乱が生じた後、急に針路を変えていたことが分かった。「衝突は、JSM(ジョン・S・マケイン)が港の方向(左)へと急に針路を変更し、(タンカーの)針路に割り込んだため起きた」という。

 報告書はさらに、衝突時の当直乗組員の複数が、操舵制御システムの「著しく異なる」別の艦から転属してきたばかりだったと付記。「こうした差異が補えていなかった。任務の割り当て前に行うべき慣熟訓練が不十分だったことが、ジョン・S・マケインの艦上における行動に繋がったのではないか」と述べている。

 衝突は、駆逐艦の急な針路変更から3分以内に起きたが、タンカーの乗組員が取った対応も衝突を「回避するには不十分だった」という。米駆逐艦の方向転換を視認したタンカーの船橋(ブリッジ)乗組員らは、駆逐艦が「前方を安全に通過できるだろうと思い込んだ」と報告書は指摘している。

 米海軍は昨年11月、ジョン・S・マケインの衝突は「主に、自己満足と自信過剰、コンプライアンスの欠如の結果」だとする調査結果を発表。今年1月、当時の艦長を過失致死と職務怠慢の罪で軍法会議にかける方針を明らかにしている。(c)AFP