【3月8日 AFP】収穫高の減少を最小限に抑えつつ、植物の生育に必要な水の量を4分の1少なくする遺伝子組み換え技術を開発したとする研究論文が6日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された。

 米イリノイ大学(University of Illinois)などの研究チームは、モデル作物として実験によく使われる植物のタバコの単一遺伝子を改変して、通常必要とする水の量の75%しか使わずに正常に近い大きさにまで成長させることに成功した。

 主要農作物でも同様の反応が得られれば、この種のものとしては初の「遺伝子ハック」が、深刻化する水不足に直面している世界の増え続ける人口に食糧を供給する助けになる可能性があると、研究チームは主張している。

 国連(UN)の「世界水発展報告書(WWDR)」によると、地球温暖化が現在のペースで進行すれば、2030年までに世界の水資源が40%不足する事態になるという。農業は地下水揚水の全体量の75%を消費するが、貧困国ではこれが90%に達する。

 研究チームは、植物の光合成に不可欠な「PsbSタンパク質」をコードする遺伝子を改変した。PsbSは日光の量に関する情報の中継に重要な役割を担うタンパク質。日光量の情報は「気孔」と呼ばれる、葉にみられる微細な小孔の開閉を促す。

 今回の遺伝子組み換えを行ったタバコはPsbS濃度が上昇し、その結果として気孔が通常より早く閉じるようになったため、より多くの水を保持することができた。

 今回の研究に参加していない専門家らは、今回の発見を有望な成果だとしながらも、食用植物で検証を行う必要性を指摘している。(c)AFP/Marlowe HOOD