【3月8日 AFP】米首都ワシントンにあるホロコースト記念博物館(Holocaust Memorial Museum)は7日、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)国家顧問がイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)に対する民族浄化の阻止でほとんど何もしていないと非難し、以前に贈った権威ある人権賞「エリー・ウィーゼル賞(Elie Wiesel Award)」を剥奪すると発表した。

 同賞は人権擁護や虐殺防止などで功績があった人に授与されている。スー・チー氏は「独裁への抵抗とミャンマー人の自由と尊厳の向上で勇気あるリーダーシップを発揮し、多大な自己犠牲を払った」として2012年に受賞した。

 しかしホロコースト記念博物館は、ミャンマー国軍によるロヒンギャ市民に対する「ジェノサイド(集団虐殺)」の証拠が次々と出ているにもかかわらずスー・チー氏は全く行動していないとして、同賞の剥奪を決めたことを明らかにした。

 同館はスー・チー氏への書簡で「ミャンマー国軍のロヒンギャへの攻撃が2016年と2017年に明らかになる中、われわれはあなたが国軍の残虐な軍事作戦を非難し、阻止するための何らかの行動を起こし、標的とされたロヒンギャの人々との連帯を示してくれるものとばかり思っていた」と表明。にもかかわらず、スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)は、国連(UN)調査団への協力を拒んだばかりか反ロヒンギャ的な発言まで行ったと非難した。

 1991年にミャンマーの軍事政権に対する長年の民主化運動を評価されてノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)も受賞したスー・チー氏は、ロヒンギャのために立ち上がらなかったとして厳しい批判を浴びている。

 スー・チー氏がロヒンギャ問題の緊張を緩和するために設置した諮問機関のメンバーだった前米ニューメキシコ州知事のビル・リチャードソン(Bill Richardson)氏は1月、スー・チー氏には「道徳的なリーダーシップが欠如」していると抗議して辞任している。

 昨年8月以来、約70万人に上るロヒンギャが国境を越えてバングラデシュに避難。ミャンマーの兵士や自警団員が殺人、レイプ、放火などをしたとも証言している。(c)AFP