【3月6日 AFP】欧州の森林に生息する、枯れ木や朽ち木に依存して生きている甲虫類は、全体の5分の1近くが絶滅の危機に直面している。科学者らが5日、警鐘を鳴らした。古くて朽ちかけた木々を森林から撤去していることが、その原因だという。

 絶滅の危機にある世界の動植物を記載する「レッドリスト(Red List、絶滅危惧種リスト)」を管理する国際自然保護連合(IUCN)が発表した報告書によると、現存する古木が自然に朽ち果てることができないのであれば、枯死木依存性の甲虫類の多くが姿を消す恐れがあるという。

 今回の調査では、対象となった甲虫700種のうち18%が危機に直面していることが明らかになった。ただし、調査対象の4分の1については類別するためのデータが不足していたため、実際の割合はこれよりも高い可能性が高い。

 一生のうちのある時期に枯れて腐食した木を必要とする枯死木依存性の甲虫類は3000種存在することが知られている。この種の昆虫は栄養再循環で重要な役割を担う上、鳥類や哺乳類のための主要な食料源を提供するほか、数種は受粉を媒介する。

 IUCNの「種の保存のためのプログラム(Global Species Programme)」を統括するジェーン・スマート(Jane Smart)氏は「欧州のあらゆる地勢で古木を守るための長期計画に保護努力を集中させる必要がある」としながら、「これにより、枯死木依存性甲虫がもたらす不可欠な生態系への貢献が今後も続く」と話す。

 専門家80人による調査に基づいた今回の報告書によると、欧州全体での樹木の減少が、甲虫の個体数減少の主な要因となっているという。さらに、都市化、観光の拡大、地中海周辺の森林火災の発生頻度と規模の増大なども、甲虫類や他の野生生物を脅かす原因になっている。

 レッドリスト最新版では、深い樹洞を持つ大木に好んで生息するカミキリムシの一種「Stictoleptura erythroptera」が危急種に指定された。また別の種の甲虫、ゴミムシダマシ科の一種「Iphthiminus italicus」は、植林開発や森林火災が原因で生息数が減少し、絶滅の危険性がより高い状態の「絶滅危惧種」に分類された。

 報告書は今回、森林管理に保護戦略を組み入れる必要性を訴えた。IUCN欧州事務局のリュック・バス(Luc Bas)局長は「現在の管理業務は、森林放牧地帯を森林か草原のどちらかに転換させ、多くの枯死木依存性甲虫が必要とする本質的な植生のモザイク状態を破壊している」と指摘している。(c)AFP