【3月11日 東方新報】中国のソーシャルメディア(SNS)上で、子どもの頃に親しんだ食べ物を懐かしむ書き込みが話題になり、70〜80年代生まれのユーザーの共感を集めている。

「北氷洋汽水」(ミカン風味のソーダ)は2011年に復活。それまでの15年の沈黙を経て、人気が再燃した。ほかにも、さまざまな懐かしい味が次々と復活している。

 懐かしの味が復活する要因の一つは、市場環境の変化だ。90年代初め、中国が当時推し進めていた改革開放路線により、米コカ・コーラ(Coca-Cola)と米ペプシ・コーラ(Pepsi-Cola)が上陸し、当時中国内で有名だったオリジナルブランドは徐々に姿を消した。

 外資が上陸したことによるインパクトのほかに、当時、政府が食品加工企業への取り締まりを強化したことも影響した。

 例えば、北京市(Beijing)内で市民に親しまれていた「稲香村の串揚げ肉」は、衛生環境や油煙排出に関して政府が示した条件を満たすことができず、2012年に販売中止となった。北京市内で18年にわたって人気を集めていた「摩奇」(モモ味のジュース)の生産工場は、政府が02年、同市内で石炭燃焼ボイラーを使用する工場の稼働運転を禁止したことで生産中止に追い込まれた。

 だが近年、外資の勢いが弱まったこと、買い付け契約期間が終了したことなどをきっかけに、国内ブランドが息を吹き返してきている。

 ほかの要因としては、SNSが懐かしの食品の宣伝に一役買っていることが挙げられる。現在の消費の中心である70〜80年代生まれが、SNSでクチコミや写真などをシェアして話題となり、そうした勢いが眠っていた懐かしの食品たちを復活させるに至った。

 また、IT関連企業も復活に一役買っている。モモ味の「摩奇」を復活させたのは、中国で生鮮食品のEコマースを手がける「毎日優鮮(MissFresh)」。毎日優鮮商品部の劉嘯峰(Liu Xiaofeng)副総裁は、80年代生まれの北京っ子だ。「摩奇」には同世代の消費者の子ども時代の思い出が詰まっていると信じ、復活させたのだという。

 一方で、こうした「懐かしの味」は、一時的に盛り上がっても、新鮮味がなくなった時に消費者をつなぎとめておけるかどうかが問題だ。

 串揚げ肉で人気の「稲香村」の店先からは、行列はあっという間に消えた。北氷洋食品(Beibingyang)が昨年5月に数量限定で復活させたアイスは、一時は入手困難だったが、今では明らかに人気が落ちている。「甘ったるすぎる。今やアイスの種類は豊富だから、わざわざこのアイスを選ばない」というのが消費者の感想だ。

 北氷洋の親会社、一軽(Yiqing)食品集団の李奇(Li Qi)董事長は、「懐かしさを売りにする商品は、短期間であれば確かに売れるが、市場で長期間勝ち続けることは難しい。『北氷洋汽水』に関しても、単純に当時の味を再現しただけではだめだ。若い人に認められることが重要だ」と話した。(c)東方新報/AFPBB News