【3月5日 AFP】人類初の1マイル(約1.6キロ)4分切りを達成した元陸上競技選手のロジャー・バニスター(Roger Bannister)氏が、3日に死去した。88歳だった。同氏の家族が4日に発表した。

「サー・ロジャー・バニスターは2018年3月3日にオックスフォードで、彼が愛した家族、彼に愛された家族にみとられながら、88歳で安らかに永眠しました」と、家族は英通信社プレス・アソシエーション(PA)を通じて発表している。

 バニスター氏は1954年5月4日、英オックスフォードのイフリー・ロード・トラック(Iffley Road Track)で1マイルを3分59秒4のタイムで走破し、世界的な栄光を手にした。

 英国出身で1980年代に五輪の1500メートルで金メダルを手にした、国際陸上競技連盟(IAAF)のセバスチャン・コー(Sebastian Coe)会長はバニスター氏の死去を受けて、「われわれの国とすべての陸上競技関係者の双方が強く悲しむ日となった。私たちの世代で、ロジャーとそのトラック内外での偉業に刺激を受けなかった選手はいない」とツイッター(Twitter)でつぶやいた。

 英バーミンガムで開催中の世界室内陸上選手権(IAAF World Indoor Championships 2018)の会場では、照明が落とされる中バニスター氏の選手としてのキャリアが巨大スクリーンに映し出され、観客は1分間の黙とうをささげた。

 4分の壁を打ち破ったことで名声を得たバニスター氏だが、1954年にカナダ・バンクーバーで行われたコモンウェルスゲームズ(Commonwealth Games、英連邦競技大会)での、後に「奇跡の1マイル」とうたわれたレースで、ライバルのジョン・ランディ(John Landy、オーストラリア)氏を破って金メダルを獲得したことに、より大きな達成感があったと振り返っていた。

 2014年のインタビューでバニスター氏は、「記録を打ち破ることより、五輪やコモンウェルスゲームで走ることの方がより重要だと私は思う。バンクーバーは私の陸上キャリアの絶頂だった。五輪の中で記録を破るのは非常に難しいが、レースに勝つというのは世界記録を打ち立てることを上回る」と語っていた。

 2004年には、英王立造幣局(Royal Mint)がバニスター氏の記録樹立から50周年を記念して、走る選手の脚とストップウオッチがデザインされた50ペンス硬貨を発行している。

 現在の男子1マイルの世界記録は、1999年にヒシャム・エルゲルージ(Hicham El Guerrouj)氏が記録した3分43秒13となっている。(c)AFP