【3月23日 AFP】平昌冬季五輪が幕を閉じて2022年の北京冬季五輪に注目が移るなか、中国では新しいスタジアムをはじめ高速鉄道や高速道路、そして3か所に散らばる選手村の建設に巨額の費用がつぎ込まれている。さらに、開催予定地の北京(Beijing)市北部では村が丸ごと破壊され、山は整備のために削られている。

 北京五輪の開幕まで丸4年が残されているものの、AFPの調査によると、大会主催者が巨大プロジェクトに必要とする経費は膨れ上がる一方で、招致活動の際に計上されていた予算を少なくとも5億ドル(約525億円)は超えると見通しとなっている。北京市は2008年夏季五輪の招致に成功した際にも、推定400億ドル(約4兆2000億円)に上る莫大(ばくだい)な資金を投入する大盤振る舞いをみせていた。

 経済大国にのし上がった中国は、目が飛び出るような大金を注いで2008年に北京五輪を開催したものの、大会後は多くの会場が負のレガシーとなっている。これを受けて、北京市は2022年大会では同様の結果を避けるべく、大会責任者が持続可能な開発目標を掲げ、新たに建設される施設に関する五輪後の使用計画を大々的に打ち出している。

 しかし、スキーやスノーボードの競技会場に予定されている、北京市に隣接した河北省(Hebei)崇礼(Chongli)では、数千人の農民が土地を追われている。ある村では五輪村をはじめ、巨大な鉄道の駅やスキー場が建設されることになっており、かつて民家があった場所は更地の状態となっている。

 さらに北にある別の村では、今年はじめに300世帯が立ち退きを済ませており、近いうちに残された赤い屋根瓦の家が取り壊される予定で、これらの跡地には、選手たちが競技会場に素早く移動する際の手段となる高速道路や高速鉄道が横切ることになっている。

 5人家族のイン・グイ(Ying Gui)さん一家は現在も村に残っている数少ない住民で、義理の娘は村の店舗の2倍の大きさを誇る家の棚に置かれたあめ玉や、紹興酒、手袋を指しながら「これが全部売れたら、私たちも立ち退くことになります。私たちには家も、耕す土地も、何も残りません」と話したが、政府から提示された補償金には満足しているとつけ加えた。

 一方、40頭の牛を売り払い、育てていたジャガイモやムラサキキャベツの最後の収穫を終えたインさんは、今後は何をするか途方に暮れており、「私は農家です。何も思い浮かびません」と語った。今では鉄道や高速道路のトンネルが掘られている建設現場の山をさまよい歩いては金属くずを見つけており、これが500グラム当たり数円で売れるのだという。