■食物のコンベヤーベルト

 体長が1メートル弱で、タキシードを着ているような黒と白の模様に首の周りの橙色の帯がアクセサリーになっているオウサマペンギンは通常、毎年の繁殖シーズンにそれぞれ1羽のパートナーとペアを組む。

 雌が産む卵は1つでほぼ2か月でふ化する。雄と雌が交代で卵を温め続ける。

 陸上では、よたよたと不格好な足どりで歩くか、氷上を腹で滑り、ひれ足のような翼を使って前進する。

 オウサマペンギンはすみかとする場所への選り好みが激しい。気温が年間を通して耐えられる範囲内で、冬季に陸地を囲むように海氷が張らず、砂や小石の平坦な浜があるなどが必要となる。そして何よりも、豊富な餌場が巣の近くになければならない。

 魚やイカなどの餌となる生き物が豊富に存在する南極海の湧昇で、温かい海水と冷たい海水が合流する海域の南極前線(Antarctic Polar Front)が、この餌場の役目を数千年にわたり果たしてきた。だが気候変動に伴い、この「食物のコンベヤーベルト」は南方に移動している。

 国際チームは今回の研究で、オウサマペンギンのゲノム(全遺伝情報)を分析し、過去5万年にわたる個体数の変動を再現した。その結果、過去に何度か発生した自然の気候変動でも海流と海氷の分布が変化したが、オウサマペンギンはその都度、変化に適応してきたことが分かった。

 論文の主執筆者で、イタリア・フェラーラ大学(University of Ferrara)とオーストリア・ウィーン大学(University of Vienna)に所属する進化遺伝学者のエミリアーノ・トルッキ(Emiliano Trucchi)氏は「オウサマペンギンはこれまで、最も安全な繁殖地を見つけるために、かなり長い間あちこちに移動することが可能だった」と説明するが、今回の変化に関しては、人為的な気候変動があまりにも突然で急速すぎると指摘している。(c)AFP/Marlowe HOOD