【2月27日 AFP】イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」によって誘拐され、性的暴行や残忍な扱いを受けたヤジディー(Yazidi)教徒の女性数千人の一人であるファリダ・アッバス・クハラフさんは、ISが去ったことでイラクが安全になったわけではなく、戻ることは難しいと表情をこわばらせた。

 先週、通訳を介してAFPの取材に応じたクハラフさんは、「何も以前と変わっていない。(ISに)加わった人々は、今も同じ地域に暮らしている。元の場所に戻って彼らを再び信じることなどできるわけがない」と述べ、「別の名前を語る悪人によって、『ジェノサイド(集団虐殺)』が再び起きないと誰が保証してくれるのか」と訴えた。

 イラク北部シンジャル(Sinjar)地域にある、かつてはのどかだったコチョ(Kocho)にIS戦闘員がやって来たのは、2014年8月3日。当時クハラフさんは18歳だった。

 長い黒髪と悲哀に満ちた瞳のこの若い女性は、スイス・ジュネーブでの人権擁護団体のサミットに合わせて行われた取材の中で、「私たちは、誰かを傷つけたり怒らせたりしたことはない。ただ穏やかに暮らしたかっただけなのに…」と話し、自分や家族が襲撃されることになるとは想像もしていなかったと続けた。

 ISは2014年に北部シンジャル一帯を掌握すると、異端者と見なしているヤジディー教徒に対する残虐行為を展開。クルド語を話すヤジディー教徒の男性の多くが虐殺されたほか、女性や少女は性奴隷として拉致され、少年は軍事教練キャンプに送られた。国連(UN)はこれらの行為をジェノサイド(大量虐殺)に相当すると非難した。

 IS戦闘員らはコチョを襲撃した際、ヤジディー教徒らに2週間の猶予を与え、イスラム教に改宗するか、あるいはそうしなかった場合にはその結果を受け入れるか、どちらかを選択するよう迫った。「彼らは村人全員を集め、改宗を求めた。私たちが拒否すると、男性たちを殺し始めた。その日一日だけで、450人を超える男性や少年たちが殺された」