【3月25日 AFP】銀行支店長のユルゲン・シャラー(Juergen Schaller)氏は、トラック運転手の資格を取り、年間2万キロの距離を運転することになるとは予想もしていなかった。

 しかし、銀行の実店舗がなくなってしまったバイエルン(Bavaria)北部のフランコニア(Franconia)地方では、シャラー氏が週に4日、きちんとした服装で、現金自動預払機(ATM)や相談窓口などが備わったトラックに乗って、郊外の村々を回ることになった。

 仕事場が机から運転席へ移ったことで「顧客とのつながりを維持する以外のこともできるようになった」と、シャラー氏はAFPの取材に対し語った。

 インターネットを利用する顧客の増加や郊外の人口減少、低金利による損失などから、大手銀行は支店の閉鎖をますます余儀なくされている。その結果、シャラー氏が勤める貯蓄銀行などは、経営方針を見直さざるを得なくなっている。

 クローナハ(Kronach)・クルムバッハ(Kulmbach)地域の貯蓄銀行の営業責任者、シュテフェン・ハーバーゼットル(Steffen Haberzettl)氏によると、2015年に始まったこの移動式の銀行支店サービスは主に、地元企業や、インターネットバンキングを使っていない高齢者によく利用されているという。

 同氏の推定によると、移動支店には1度の停車で約20人の訪問があるという。これは、1日に約8800人が利用するインターネットバンキングに比べればごくわずかな数だが、年間1万2000人の顧客に対応することに相当するという。

 しかしハーバーゼットル氏は、「採算がとれないと分かっていて、顧客たちのためにこのサービスを運用したんです」と語った。

 ある70歳代の女性は、移動式銀行は送金や必要な用事をするのにとても便利で、この女性を含め、遠くの支店に行くための車を持っていない人々はとても喜んでいると語った。(c)AFP/Jean-Philippe LACOUR