【2月23日 AFP】独裁者や犯罪者、テロリストが人工知能(AI)を利用して選挙を操作したり、ドローン(小型無人機)によるテロ攻撃を行ったりしたら?──20人を超える世界の専門家が、AI技術の悪用に警鐘を鳴らす報告書を発表した。

 21日に発表された報告書「The Malicious Use of AI: Forecasting, Prevention, and Mitigation(AIの悪用:予測、防止、リスク軽減)」で、英国ケンブリッジ大学(University of Cambridge)の「存在リスク研究センター(CSER)」や米国の「電子フロンティア財団(EFF)」、「新米国安全保障センター(CNAS)」、AI研究非営利団体「オープンAI(OpenAI)」などの専門家らは、作業を自動化するプログラム「bot(ボット)」を利用したニュース取材・収集への介入や、ソーシャルメディア(SNS)への侵入、急成長するサイバー犯罪などを挙げ、向こう10年間に起こり得るシナリオに関する分析結果を100ページに及ぶ報告書にまとめている。

 CSERのエグゼクティブ・ディレクター、ショーン・オヘイガティ(Sean O hEigeartaigh)氏はAFPに対し「サイバーセキュリティ、物理的安全、政治的安全保障のすべてにまたがる形で、AIは新たな脅威を及ぼすか、あるいは今ある脅威の性質に変化をもたらすだろう」と述べた。

■個人に対するサイバー攻撃の進化

 報告書によるとまず、マルウエア(悪意のあるソフトウエア)が仕込まれたメールを送信し、個人情報を不正に取得する詐欺の手口である「フィッシング」の脅威が増すことが考えられる。例えば、現在の技術では特定の個人を標的とする「スピアフィッシング」には手間がかかるが、「AIを使えばプロセスの多くを自動化し、大規模なスピアフィッシングが可能になるだろう」とオヘイガティ氏は言う。