■伝統的側面からのアプローチ

 しかし近年、こうした悪しき慣習には伝統的側面からのアプローチで対応するとの動きがあり、ポーコットのスピリチュアルヒーラーや高齢者らが、FGM根絶を目指してこの問題に取り組んでいる。

 FGMを半世紀にわたり行っていたという70歳の女性も、今後一切儀式を執り行わないことを決めた。女性は目に涙を浮かべながら、FGMによってこれまでに幼い少女らが出血や感染症で命を落としていることをAFPの取材に打ち明けた。

 ある時の儀式では、汚染された刃物を使ったことで少女ら6人をHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染させてしまったという。「この6人の少女がどのように死んでいったか、彼女らが受けた苦痛を思うとき、私は心が痛み、申し訳なかったと思う」と後悔をにじませた。

「妹がFGMにより死んでいくのを見た。自分の子どもたちを同じ目に合わせたくない」──そう語るのは、地元政府のポーリーナ・イスラ・チェパル(Paulina Isura Chepar)氏だ。彼女自身もFGM経験者で、この悪しき慣習をなくすべきと強く訴えている。

 AFPの取材が行われる前の週には、これまでのFGMと児童結婚に対して許しを請う儀式があった。FGMの傷が癒えるまで少女らがとどまっていたとされる洞窟の近くで行われたこの儀式では、オスのヤギがいけにえとしてささげられたという。

 儀式を執り行ったスピリチュアルヒーラーのジェレミアさん(78)は「ここではもうFGMを受けた女性たちが祝福されることはない。彼女らはこの行為を呪い、そしてわれわれにやめるよう訴えている」と語った。(c)AFP/Grace MATSIKO