■昨年オオカミに殺された家畜への補償金は4億円超

 1日に平均2~4キロの肉を食べる捕食動物のオオカミは、山岳地帯の家畜の襲撃被害が急増している原因とされている。

 アルプスの地元自治体の公式統計によれば、2016年に同地域で殺された羊は計1万匹。オオカミはシカやイノシシ、家畜を好んで餌とすることが知られている。

 オオカミに殺された家畜に対して、国から農場経営者らに給付された損害補償金は2016年に320万ユーロ(約4億2000万円)に達し、2013年比で60%増となった。

 研究者らは、オオカミの全個体数の10~12%を毎年駆除することはオオカミの再生能力には影響しないと主張している。しかし、環境保護論者はこうした駆除が認可されていることに反発を表明。世界自然保護基金(WWF)やフランス自然環境(France Nature Environnement)などを含む自然環境保護団体は、政府には農業圧力団体の働き掛けを拒否する「政治的な勇気が欠如している」と批判した。

 オオカミの専門家、ジャンマルク・ランドリ(Jean-Marc Landry)氏は、オオカミは移動性が高く、すぐにアルプスを越えて別の地域に移動することも、政府にとっては頭の痛い問題だと指摘する。

 ランドリ氏によると、オオカミはフランスの中央に位置する中央高地(Massif Central)地域ですでに目撃されているが、同地域には国内最大手の牧羊業者らが拠点を置いている。

 ランドリ氏はAFPの取材に、「問題は、オオカミが人々に望まれているか否かではなく、ここにいることなのだ」と語った。

「私たちは第3の道について検討し、共存の方法を見つけ出す必要がある」(c)AFP/Amélie BOTTOLLIER-DEPOIS and Adam PLOWRIGHT