【2月16日 AFP】身体的には、ニコール・スアレス(Nicole Suarez)さんは無事だ。けれど、眠ることができない。そして、これからずっと学校に行くのは怖いと感じることだろう。

 スアレスさんとクラスメートたちは「バン、バン、バン」という銃声を聞いて教室の中に逃げ込んだ。19歳の男が銃を乱射し始めたその場で、スアレスさんたちは隠れようとして壁に体を押し付けた。

 バレンタインデーの14日、米南部フロリダ州マイアミ(Miami)から北へ約80キロ離れた同州パークランド(Parkland)のマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校(Marjory Stoneman Douglas High School)で、ニコラス・クルーズ(Nikolas Cruz)容疑者が銃乱射事件を起こした。

■教室から両親に送られた緊迫のメッセージ

 スアレスさんの父親は、娘が無事であることをどうにかして知りたいと思って「1文字でいいからメッセージを送ってくれ」とスアレスさんに懇願した。

 封鎖された教室内からスアレスさんは両親に、身が凍り付くようなテキストメッセージを送った。「学校で銃撃が起こっているから警察を呼んで」。さらに電話はしないでと両親に伝えた後「愛している」と書き添えた。

 スアレスさんの父親は「お願いだから返事をしてくれ」「ニコール、大丈夫か?」と立て続けにメッセージを送ったが、返信はなかった。「返事をして」「ニコール、どこにいる?」「無事だと分かるよう何でもいいから書いて」「1文字でいいから」

■「見てはいけない、ただ走り続けて」

 特別機動隊(SWAT)が教室内にいた生徒たちを発見し、スアレスさんは最初に避難した一人となった。

「見てはいけない、ただ走り続けて、何があっても足を止めないで」と機動隊員が警告した。

 だが、廊下に出ると遺体が数体、床に横たわっているのが目に入った。「生きているのか、死んでいるのか分からなかった。でも、完全に冷たくなっているように見えた」とスアレスさんは語った。

 警察は避難した生徒との合流場所として、高校の近くのホテルに家族を待機させた。スアレスさんはそこで待っていた父親と出会うことができた。「それまで私は全く泣いていなかった。でも、父と母の顔を見たら一気に『ああ』という感じがした」

「逃げることができてとても安心したけれど、悲しかった。泣きたいのかうれしいのかさえ、分からなくなっていた」(c)AFP/ Leila MACOR