【2月14日 AFP】春節(旧正月)を間近に控え、中国では帰省ラッシュが始まっているが、今年は休みが明けても都市部には戻らないという人が多い。かつて中国経済に力を与えた地方からの出稼ぎ労働者たちだが、近年は首都・北京での滞在が歓迎されなくなっていることがその背景にある。

 中国の春節では毎年、人が数十億人規模で移動する。年次行事での人の大移動としては世界最大だ。北京のレストランで従業員として働いていたというリー・ウェンさん(47)も帰省客の一人。帰省を前にAFPの取材に応じ、故郷への片道切符を購入したことを明らかにした。

 リーさんは出稼ぎ労働者として10年前に北京にやってきたという。成都(Chengdu)の大学で学ぶ娘を養うことがその目的だ。

 しかし近年、彼女のような出稼ぎ労働者は、人口過密都市となった北京では歓迎されなくなった。北京市は2020年までに人口を2300万人に抑えることと、4000万平方メートルの違法建築物の解体を計画しているが、その対象となっているのは低所得者の家屋や店舗がほとんどだ。リーさんも出稼ぎ労働者の生活を破たんさせている市の強制退去計画の影響を受けた。

 リーさんはAFPの取材に「他のどこよりも賃金待遇がよかったから北京に来た。ただ住んでいたエリア周辺では、胡同に面した建物がすでに数多く解体されている」と語り、「一般的なアパートの部屋を借りると家賃は3倍に跳ね上がる。市内で暮らしていくことはできない」と続けた。

 昨年11月、不法に設置された建物で火災が発生し、犠牲者19人が出た。これを受け、北京市当局は基準に満たない建物の取り壊し作業をさらに進めた。当局は街をきれいにするために計画の推進が必要と主張する。火災発生時における安全の確保は、出稼ぎ労働者らが暮らす建物において大きな問題となっている。こうした建物では、電気配線がいい加減で、非常口が設けられていないものも多い。

 だが、半ば強引な取り壊しと大規模な強制退去に対しては、一般市民から異例の抗議が起こり、当局を慌てさせる場面もみられた。