【2月13日 AFP】今から100年前の第1次世界大戦(World War I)中、米軍のある部隊が欧州の地へと乗り出した。だが向かった先は銃声が響く戦場ではない。サクソフォンやドラム、管楽器がスウィングする音楽の熱狂の中だ。

 100年前の2月12日、米国の第369歩兵連隊の「ハーレム・ヘルファイターズ・バンド(Harlem Hellfighters Band)」が、欧州初とされるジャズ演奏会をフランス北西部の市ナント(Nantes)で行った。戦争が終わりに近づく中、ドイツとの戦いに参戦した米軍の到着は、甘美で文化的な征服の始まりをも意味した。

 バンドメンバーの一員だったノーブル・シスル(Noble Sissle)氏は回顧録で、「バンドの演奏が終わると観客は大声で笑っていて、顔には笑みをいっぱい浮かべていた。これこそが、重大な局面にある今のフランスに必要なものなのだと言うしかなかった」と述べている。

 ナントでは今月12日、伝説的な演奏会の100周年を記念してさまざまなコンサートや会議、展示会などが行われた。

 夜のオープニングには、当時バンドリーダーを務め、「ジャズの王様」と呼ばれたアフリカ系米国人のジェームズ・リーズ・ヨーロップ(James Reese Europe)中尉の孫3人もゲストとして招かれた。

 第369歩兵連隊は、人種隔離政策が取られていた米国から、フランス指揮下で戦うために派遣された4連隊のうちの一つだった。ナントの式典「ジャズの100年」の代表者マチュー・ジュアン(Matthieu Jouan)氏によると、「戦時下で部隊を率いた初のアフリカ系米国人将校だった」ヨーロップ中尉によって集められた40人のバンドメンバーは、前線で戦っていないときは部隊や地元住民などを演奏で楽しませ、「行く先々で熱狂を呼んだ」という。

 ヨーロップ中尉は英雄として戦地から帰還したが、それからわずか数か月後の1919年5月に39歳で死去した。

 だが、その死と時を同じくして、3人の偉大なスター、デューク・エリントン(Duke Ellington)、ルイ・アームストロング(Louis Armstrong)、シドニー・ベシェ(Sidney Bechet)が現れ、ジャズの時代が幕を開けることとなる。(c)AFP/Anne-Sophie LASSERRE