【2月13日 AFP】アリは細菌や真菌類に対する強力な殺菌剤を自ら生成しているとの研究論文がこのほど発表された。研究は、働き者の昆虫であるアリを人間のための製薬工場として利用可能かを調べる目的で行われた。

 アリの持つ優れた「製薬能力」に関する今回の発見は、人類が過去100年間に開発した有効な抗生物質の持ち札が細菌類の耐性強化に直面して徐々に少なくなっている中で発表された。

 英国王立協会(Royal Society)のオンライン科学誌「ロイヤルソサエティー・オープンサイエンス(Royal Society Open Science)」に掲載された論文によると、アリ20種を用いた実験では、12種から抗菌性物質が見つかったという。

 論文の共同執筆者で、米アリゾナ州立大学(Arizona State University)のクリント・ペニック(Clint Penick)氏は、AFPの取材に「新しい抗菌性化合物を探す上で、アリがその調査対象に適していることが今回示された」と語った。

 アリは体にある特殊な分泌腺で抗菌性化合物を生成する。この分泌腺をめぐっては、アリの「化学工場」とも呼ばれている。「アリはこの腺の分泌物で体の表面を覆っており、中には人が部屋の中で殺菌洗浄剤を利用するのと同じように抗菌性物質を巣の周囲にまくアリもいる」とペニック氏は説明する。

 研究チームは、アリが作り出した化学物質を表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)で試験した。人の皮膚表面の常在菌である表皮ブドウ球菌は、通常は無害な細菌だ。異なる種のアリが生成した化合物には細菌を殺傷する有効性に差があることも分かった。今回見つかった化学物質で、人の病気を引き起こす細菌を対象とした試験はまだ行われていない。

「これまでに記録されているアリの種数は1万5000種以上に上り、それぞれが抗菌作用を持つであろう多種多様な化合物を生成する可能性が高いことを指摘しておくことは重要だ」と、ペニック氏は話す。