【2月12日 AFP】国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ(Thomas Bach)会長が12日、北朝鮮が政治目的で平昌冬季五輪を「乗っ取ろうとしている」という懸念を一蹴した。IOCは同日、五輪終了後にバッハ会長が北朝鮮を訪問すると発表している。

 五輪開幕後、北朝鮮と韓国は相次いで外交交渉を行っているが、AFPのインタビューに応じたバッハ会長は、北朝鮮は純粋にスポーツという側面から五輪に参加しているという見解を示し、「これはスポーツだ。IOCはこのことを明確にしている。橋をかけ、ドアを開けるのはスポーツの役割であり、それ以上のものではない。それこそスポーツの象徴であり、その橋を渡れば前向きな結果がやってくる可能性があるという事実をシンボル的に示している」 と語った。

 北朝鮮を五輪に参加させるのは、バッハ会長が率いるIOCの悲願だったとされている。開会式で北朝鮮と韓国は同時に行進し、女子アイスホッケーでは南北合同チームが結成された。プロパガンダによるクーデターに打って出ている北朝鮮は、美女応援団を含め、22人の出場選手に対し500人以上の関係者を韓国に送り込んでいる。

 五輪開幕後、両国は和解に向けた交渉を激化させ、韓国入りした北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長の妹、金与正(キム・ヨジョン、Kim Yo-Jong)氏は、韓国の文在寅(ムン・ジェイン、Moon Jae-in)大統領に訪朝を要請している。

 しかし、韓国国民は両国が突然和解することに懐疑的な見方をしており、マイク・ペンス(Mike Pence)米副大統領は、北朝鮮が「五輪のメッセージやイメージを乗っ取ろうとしている」と批判した。大会前には、北朝鮮の好戦的な挑発やミサイル実験により平昌への選手派遣に二の足を踏む国もあり、五輪はもっと安全な場所で開催されるべきという議論も噴出した。

 バッハ会長は、IOCがピースメーカーの役割を担うことに満足しているとした一方で、この機会を利用するかどうかは政治家次第だと話している。

「スポーツは平和を作り出すことはできないが、橋をかけることができる。われわれには扉を開け、対話がポジティブな結果につながるということを示すことができる。われわれは何年もかけて議論し交渉してそのことを示してきた」

「これがわれわれにできることだ。スポーツでできる範囲はいつも制限されている。あとは政治家がなすべき仕事だ。この機会を対話に使うか否かは彼ら次第だ」(c)AFP/Talek HARRIS