【2月9日 AFP】白い幽霊のような姿をした深海魚のガンギエイの一種は、産卵した携帯電話サイズの卵嚢(らんのう)のための「ふ化室」を海底の熱水噴出孔で温められる海水域に形成しているとの研究論文が8日、発表された。

 英オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に掲載された論文によると、ソコガンギエイ属のこの魚(学名:Bathyraja spinosissima)の卵が、南米西岸沖の海嶺ガラパゴスリフト(Galapagos Rift)に沿った水深1650~1700メートルの海底にある熱水噴出孔の近くで発見されたという。

 論文の共同執筆者で、エクアドル・チャールズダーウィン研究所(Charles Darwin Research Station)のペラヨ・サリナス・デ・レオン(Pelayo Salinas de Leon)氏は、AFPの取材に「活動的な熱水噴出孔の熱を使って卵を温めるこのような行動が海洋環境で記録されたのは今回が初めてだ」と語る。

「一つの仮説として、この種の深海エイは卵がふ化するまでの時間を早めるためにこうした行動を取っていることが考えられる。このエイの卵は周囲海水温度の2.7度では、ふ化に4年以上かかる可能性があるからだ」

 熱水噴出孔は1977年に初めて発見されて以来、固有の生物群と生物過程を維持していることが明らかにされている。

 知られているすべての種の中で最も深い海に生息する種の一つであるこの深海エイは、動物界に関して報告されている中でふ化期間が最も長い部類に入る。

 サリナス・デ・レオン氏と研究チームは、2015年に実施した10日間の調査航海でこの深海エイの「ふ化室」を発見した。調査では、小型無人深海探査機「ヘラクレス(Hercules)」を海底に送り込んだ。

 サリナス・デ・レオン氏は、取材に応じた電子メールで「残念ながら、深海の大半に関してと同様に、稚魚がふ化したらどうするかや、稚魚が成長するまでどこで過ごしているかなどに関する情報はまったくない」として、「さらなる調査を行う必要がある」と付け加えた。

 陸の動物の中では、長い首を持つ草食の竜脚類恐竜の仲間が、異常に大きな卵をふ化させるのに火山で加熱された土を利用していた他、トンガに生息する飛べない現生鳥類のツカツクリにも同様の行動がみられる。(c)AFP