【2月8日 AFP】先端技術や効率的な公共交通機関、治安の良さなど、台湾をめぐる評判は決して低くない。しかし、このたびの地震であらわになったのは、手抜き工事や疑わしい安全基準が横行していた「過去の台湾」の姿だ。

 台湾では近年、地震で大きな被害が出るのは一部の建物のみに限定され、大半はそこまでの影響を受けずに済むケースが目立つようになった。地震で倒壊する建物の多くは、建築基準改正前に建てられ補強工事が行われていない建築物だ。

 6日、台湾東部でマグニチュード(M)6.4のやや強い地震が発生し、観光客に人気の花蓮(Hualien)は大きな被害を受けた。同市ではこれまでに少なくとも9人が死亡、数十人の安否が不明となっている他、大きく傾いた集合住宅に住民らが取り残される事態となっている。

 台湾ではちょうど2年前の2016年2月6日、同規模の地震が南部の台南(Tainan)で発生。この時の地震でも、市内の大半の建物は大きな揺れに耐えることができたが、集合住宅1棟が倒壊し117人の命が犠牲となった。

 今回の地震では、鉄筋不足といった欠陥が傾いた集合住宅で確認できたと検察当局が明らかにしている他、コンクリート製の構造体に発泡スチロールや空き缶が詰め込まれていたことが写真で判明した。これを受けて犠牲者の遺族からは激しい憤りの声が上がった。

■古い建物は危険

 台湾で建築基準が改正されたのは、死者2400人を出した1999年の巨大地震の後だ。改正後は、鉄筋の本数を増やし耐性を向上させるなど、建物の耐震強度を上げるためにより厳しい建築要件が導入された。

 しかし、全ての建物が基準を満たしているわけではなく、それ以前に建てられた一部建物への補強は不十分との意見も多くの人から上がっている。

 台南土木技師協会の前代表は、AFPの取材に対し、耐震をめぐる「最大の障壁」は老朽化した建物を補強するのに必要な資金だと語る。

「古い建物の住民は、あまり裕福でない傾向にある。たとえ彼らが安全面での問題に気付いていたとしても、どうすることもできないと考えて現実逃避したり無視したりするだろう。別の場所への転居を選ぶかもしれない」と述べ、今後の大きな地震で古い建物が倒壊する恐れがあることを指摘した。

 また国立台湾大学(National Taiwan University)の土木工学の専門家は、住宅の補強工事に無関心だったり、工事費用の支払いを渋る人がいたりする以上、政府主導で安全性の向上を目指す必要があると話している。(c)AFP/Amber WANG