【2月8日 AFP】マンションが突然、激しく傾き、チェン・チーウェイ(Chen Chih-wei)さん(80)は地震が起きたことに気付いた。

 台湾の人気観光地の花蓮(Hualien)で6日深夜にマグニチュード(M)6.4の地震が発生した時、すっかり寝入っていたチェンさん。AFPに対し「何もかもがひっくり返った。ベッドは完全に横倒しになった。眠っていたが、飛び起きた」と語った。

 チェンさんは雲翠(Yun Tsui)ビルの最上階で娘と共に暮らしていた。少なくとも4人が死亡したこのビルは、低層部が押しつぶされて40度傾いた危険な状態にある。

 チェンさんは命からがらベランダにたどり着き、救助を待った。活断層上に位置する台湾に暮らし、地震に慣れているとはいえ、80代のチェンさんにとって決して楽なことではなかった。チェンさんは「(マンションは)完全に傾いてしまい、立っていられなかった。うちの階はかなり傾いていたから、這いつくばって外に出た」と回想する。

 匿名で取材に応じた別の高齢の住人も、チェンさんと同じように傾いてめちゃくちゃくなったマンションから這い出したと語った。この住人は「クローゼットも、棚も、テーブルも、何もかもが倒れた」「ベッドから這い出すのもやっとだった。あらゆるものが積み重なっていた。水道管が破裂して足が水に漬かった」「9年前にこの家を買ったのは金の無駄だった」と語った。

 雲翠ビルの管理人の一人、チャン・ファーン(Chang Fa-an)さんは、建物がM6.4の地震に耐えられなかったことに驚きを隠せない様子で「このビルが建てられた当初は地域で最も高価な集合住宅だったのに」と語った。チャンさんによると過去に何度か地震が起きてからは、管理人たちがひび割れの有無について定期検査を行っていたが、異常が見つかったことは一切なかった。

 救助活動を見守っていた住人の女性は、最近行われた改装工事で建物の強度が落ちたのではないかと疑問の声を上げた。この女性によると、一部の住人が隣室を買い足して壁を壊し住居を広げた他、1階の飲食店も最近、間仕切りを取ったばかりだったという。(c)AFP