【2月7日 AFP】地球上の生命を有害な紫外線から守っているオゾン層が、世界で最も人口の多い地帯の上空で予想外に減少しているとの研究論文が6日、発表された。

 1987年に採択された、オゾン層を破壊する物質の生産・消費の具体的削減策を定めた国際協定「モントリオール議定書(MontrealProtocol)」により、上層大気、特に南極大陸上空のオゾンを化学的に分解するフロン等が規制された。

 それから約30年後の現在、南極上空と上部成層圏の「オゾンホール」は明確な回復の兆候を示している。成層圏は高度約10キロから始まり、厚さが約40キロだ。

 だが同時に、高度10~24キロの下部成層圏に存在するオゾンの分解が徐々に進行していると、今回の論文を発表した研究者二十数人からなる国際チームは警告している。

 論文の主執筆者で、スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)の研究者のウィリアム・ボール(William Ball)氏は、AFPの電話取材に「(人類の大半が居住している)熱帯と中緯度の地域では、オゾン層はまだ回復し始めていない」と語り、「実際に、現在の状況は20年前よりやや悪化している」と指摘した。

 オゾン層の破壊が最も顕著だった21世紀の始まり前後では、オゾン層が約5%減少していたことが、過去の研究で示されていた。

 欧州地球科学連合(EGU)の学術誌「Atmospheric Chemistry and Physics」に掲載された論文によると、複数の人工衛星による観測に基づく今回の最新研究では、オゾン層が現在さらに0.5%減少しているとの推定結果が得られたという。

 この結果に関して確証が得られれば、オゾン層破壊の度合いが「現在、史上最高レベルに達している」ことになると、ボール氏は語った。

 論文の共同執筆者で、英ロンドン大学経済政治学院(LSE)グランサム気候変動環境研究所(Grantham Research Institute on Climate Change and the Environment)の共同所長を務めるジョアナ・ヘーグ(Joanna Haigh)氏は、低緯度地帯に及ぶ可能性のある害は実際に極地方より深刻化する可能性があると指摘する。

「オゾンの減少はモントリオール議定書制定前の極地方で観察されたより小さいものの、低緯度地帯の方が紫外線が強く、居住人口も多い」

 この憂慮すべき傾向を引き起こしている可能性のある原因は二つあると、論文は結論づけている。