【2月12日 AFP】雪に覆われたノルウェーの山村に作られた巨大かまくらの中では管楽器の音が鳴り響き、氷点下24度の凍えるような寒さの中、氷のベンチに身を寄せ合って座る観客たちの心を温めていた。

 首都オスロの西195キロに位置するフィンセ(Finse)の山村で今月初め、第13回「アイスミュージック・フェスティバル(Ice Music Festival)」が開催された。

 ただ、観客よりもっと寒い思いをしていたのは4人の演奏家だ──打楽器のシロフォンやクラベス、その他管楽器など彼らが演奏する楽器はすべて、凍った湖から切り出した氷の塊りを慎重に削って作られたものなのだ。

 指がまひしそうなパフォーマンスの問題点は、演奏すればするほど、楽器が解けてしまうことだ。

 打楽器奏者で同フェスティバルの発起人であるタリエ・イスングセット(Terje Isungset)さんは、「解けていく楽器で演奏すること」は簡単ではないと言う。

 青色や青緑色のライトで照らされた会場で、厚手のウールの手袋をはめたイスングセットさんは、氷でできた管楽器に温かい息を吹き込んだ。隣では、美しい声のボーカルが寒さをしのぐためにマフラーで口を覆い、バス奏者は手袋を外して氷でできた楽器の弦を引いた。

 英国を拠点とする写真家で演奏家の一人のエミール・ホルベ(Emile Holba)さんはAFPに対し、「芸術と狂気は紙一重だ」と大笑いしながら語った。(c)AFP/Ilgin KARLIDAG