【2月5日 AFP】中国政府に批判的なゴシップ本などを扱う香港の書店経営者の桂民海(Gui Minhai)氏(53)が先月、当局によって再び拘束されたとみられる事態を受け、同氏の娘アンゲラ(Angela Gui)さん(23)がAFPのインタビューに応じ、二度と父親に会えないかもしれないと不安を訴え、釈放に向けて国際社会が行動を起こすよう強く求めた。

 桂氏は1月20日、検診のためスウェーデンの外交官2人と電車で北京へ向かう途中、私服警官らに連行されたという。医師らによると、桂氏は難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患っている可能性があり、専門医の診断を受けるために北京に向かっていた。同氏は中国生まれだが、後にスウェーデン国籍を取得している。

 その後、アンゲラさんの元には桂氏からの連絡は一切なくなり、所在に関する情報も入っていないという。留学先の英国イングランドから取材に応じたアンゲラさんは、「どんな恐ろしい展開になってもおかしくない」と不安を口にした。

 桂氏の失踪は中国・スウェーデン両国政府間の外交問題に発展し、米国や欧州連合(EU)から同氏の即時釈放を求める声も上がっている。しかし、中国政府はこれまでのところ同氏に関する言及を避けている。

 アンゲラさんはスウェーデンや各国政府に対し、「ただ受け入れがたいと繰り返し言うのではなく、実際の結果を示してほしい」と訴えた。

 桂氏が失踪したのは今回で2度目。1度目は2015年、タイでの休暇中に行方不明となり、中国の某所で身柄を拘束されていた。その後、同氏は中国国営メディアに登場し、交通事故で人を死なせ、さらに違法書籍の密輸に関わったなどと告白していた。

 中国政府は2017年10月、桂氏の釈放を発表。しかしアンゲラさんによると、桂氏はその後も東部の港湾都市、寧波(Ningbo)に「自宅軟禁」されていたという。

 アンゲラさんはAFPに対し、過去3か月で何度か桂氏とスカイプ(Skype)でやり取りをし、寧波市内の移動は可能だが、当局に尾行されていると同氏が語っていたと明らかにした。また桂氏は旅券などの書類申請のため、上海にあるスウェーデン領事館に行くことを3度許可されていたという。

 アンゲラさんによると桂氏の手の筋肉は委縮が始まっており、足の裏の感覚もやや失われているという。アンゲラさんは「もし父がALSならば、残された時間はほとんどないかもしれない」と懸念を示した。(c)AFP/Laura MANNERING