【2月2日 AFP】炎に包まれる家々、木の枝につるされた人々を表す棒線画──バングラデシュの難民キャンプにいるイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)の子どもたちが描いた心をかき乱される絵だ。

 過密状態のキャンプで子どもたちが描く絵は、徐々に花や晴れた日の風景など、心理学者が健全な若者たちから予想される絵に変わっていっている。だが、ミャンマー軍と仏教徒の暴徒が民族浄化に当たるとされる軍事作戦と運動を繰り広げたミャンマー・ラカイン(Rakhine)州へ帰還すれば、子どもたちの癒やしの過程は逆行し、永遠に子どもたちが傷ついたままになってしまうかもしれないと、専門家らは懸念している。

「私たちが逃げようとしたときに友達は軍と仏教徒に殺された。あちらこちらに遺体があった」と、12歳の少女はスカーフで涙をぬぐいながら震えた声で話し、さらに「今、戻ったら、彼らは私たち全員を殺すでしょう。二度と戻ろうとは思いません。戻りたくない」と語った。

 昨年8月以降、バングラデシュへ追われたロヒンギャ難民69万人の3分の2は、この少女のような子どもたちだ。ほとんど何も持たずに1人で到着した数千人もの子どもたちは、すさまじい住民間の暴力で自分たちの村が焼かれ、家族が殺される様子を目にした生々しい記憶を持っている。

 国連(UN)の推計では、レイプや拷問を目撃して何らかの形の心の傷(トラウマ)を負った子どもたちは17万人いる。難民たちは、国境沿いの川岸から広がる難民キャンプにこの数か月暮らしている。絶望的だったキャンプの状況は着実に改善してきている。

 数か月にわたった国際的な圧力を受けて、アウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)国家顧問は昨年11月、ロヒンギャ難民のミャンマー帰還を2か月以内に開始することでバングラデシュ政府と合意に達した。だが、1月末から開始されるはずだった帰還は、両国が互いの準備不足を非難する形で、見送られた。