【1月30日 AFP】ロシア反ドーピング研究所の元所長で、同国が国家ぐるみでドーピングを行っていたことを告発したグリゴリー・ロドチェンコフ(Grigory Rodchenkov)氏が、ドイツ公共放送ARDの番組で陰謀を指示したのはウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領だったと主張した。

 ロドチェンコフ氏は29日放送の番組で「当然のことながら、命令はトップである大統領からきたものだ。なぜなら、そうした特殊任務にロシア連邦保安局(FSB)を配置できるのは大統領だけだからだ」とすると、プーチン大統領が計画を把握していたことは「否定できない」と語った。

 ロドチェンコフ氏はまた、研究所で働いていた当時、スポーツ省の副大臣だったユーリ・ナゴルニフ(Yury Nagornykh)氏にドーピングプログラムの詳細を報告していたことを明かし、その内容は前スポーツ相のビタリー・ムトコ(Vitaly Mutko)副首相経由でプーチン大統領にも伝わっていたはずだと指摘。さらにロシアの組織的なドーピングシステムは2014年ソチ冬季五輪以前から構築され、2008年北京五輪と2012年ロンドン五輪でも行われていたと話しているという。

 研究所の幹部2人が相次いで突然死したことで、命の危険を感じたとして2016年に米国へ渡ったロドチェンコフ氏は、現在は米連邦捜査局(FBI)の証人保護プログラムを受けており、インタビューでは「毎日楽しく過ごしている。まだ生存している」と述べた。一方、ロシアは同氏に逮捕状を出し、国際指名手配リストに追加する措置を取っている。

 世界反ドーピング機関(WADA)の独立捜査官であるリチャード・マクラーレン(Richard McLaren)氏がまとめた報告書で、ロシアは国家ぐるみの大規模なドーピングが暴かれ、2016年リオデジャネイロ五輪への選手団派遣を一部禁止された。同国は2018年平昌冬季五輪・パラリンピックの出場も禁じられているが、潔白が証明されたアスリートに関しては、厳しい条件と中立旗の下での参加が認められている。

 WADAと国際オリンピック委員会(IOC)は、ドーピング問題への関与でナゴルニフ氏とムトコ副首相に永久追放処分を科したが、プーチン大統領の責任についてはどちらも言及していない。(c)AFP