【1月29日 AFP】韓国南東部・密陽(Miryang)の病院で発生した火災では、少なくとも38人が死亡、100人以上が負傷し、同国で過去10年に起きた中で最悪の火災となった。しかし、市民や病院職員らが危険を顧みず、なかには自身の命を犠牲にしてまで懸命な救出活動を行い、高齢女性を中心とした患者らの命を数多く救っていたことが目撃者らによって明らかになった。

 キムという苗字だけ明かした女性によると、病院が煙に包まれるよりも前にある男性が引っ越し用トラックで現場に到着し、金属製の長いはしごを使って大勢の人を救出したという。

「トラックは救急車や消防車よりも前に到着し(中略)2階と3階の窓から助けを求めて叫ぶ人たちに向かってはしごを伸ばした」とキムさんは27日、AFPに語った。キムさんの他にも多くの目撃者が同様の証言をしている。

 キムさんはさらに「運転手ははしごを繰り返し上げ下げし、煙が充満した部屋からたくさんの人を脱出させた」と述べた。その男性は、消防車やヘリコプターが現場に到着するとすぐに走り去ったという。

 別の目撃者は、看護師や医師らが煙の立ち込めた病院内を走り回り、患者らを避難させていたと話した。この火災では、発生当時に勤務中だった9人の病院職員のうち3人が死亡している。

 チャンという苗字の女性は「数人の看護師が裸足で暗い廊下を走り回り、『火事だ!みんな逃げて!』と叫んでいた」と言う。「看護師たちは泣きながら、他の看護師が何人か建物の中に取り残されていると叫んでいた。でも患者を避難させることをやめなかった」

 地元メディアが放送した病院内の監視カメラ映像には、看護師や医師らが必死に廊下を走り、その数分後に廊下に黒い煙が立ち込める様子が捉えられている。

 チャンさんは「看護師たちはひどくせき込んでいて、手は血だらけだった。人々を避難させている間にけがをしたようだった」と話す。また、ひとりの男性職員が燃え盛る炎を消そうと、消火器を手に煙が充満した病院の中に入っていったという。

「それ以来、彼の姿は見ていない。生きているのか死んでしまったのかもわからない」とチャンさんは言う。

 正確な火災原因については現在調査中だが、捜査当局者は27日夜の記者会見で、現場での予備捜査から、1階給湯室天井の電気配線に欠陥があったとみられると発表した。(c)AFP