【1月24日 AFP】女子体操選手への性的暴行で罪に問われている元チームドクターのラリー・ナサール(Larry Nassar)被告の被害者の一人で、五輪で計6個のメダルを獲得したアレクサンドラ・レイズマン(Alexandra Raisman)が23日、米国オリンピック委員会(USOC)は少女たちを見捨てた責任を負うべきだと断じた。

 リオデジャネイロ五輪金メダリストのシモーネ・バイルス(Simone Biles)ら米体操女子が被害者となったナサール被告による性的スキャンダルへの批判を受け、米体操連盟(USA Gymnastics)は22日、ポール・パリリャ(Paul Parilla)理事を筆頭にジェイ・バインダー(Jay Binder)理事、ビッツィ・ケリー(Bitsy Kelley)理事が辞任。USOCのスコット・ブラックマン(Scott Blackmun)最高経営責任者(CEO)は声明で同委員会は昨年10月から米体操連盟と変革を推し進めるために話し合っているとしている。

 前日の米体操連盟の理事3人の辞任とブラックマンCEOの声明について、レイズマンは「USOCは、あたかも問題に取り組んでいるかのように、臆面もなく体操連盟の何人かが辞任(注意:解雇ではない)したと発表しました」とツイート。「彼らはこの混乱における自らの役割をまだ認識していません。彼らの中では説明責任が存在していないのです!まるで私たちの誰も虐待などされなかったかのように!」

 レイズマンは特にブラックマンCEOの声明を批判しており、ほとんど無力であまりに遅すぎるものの、「米体操連盟は勇気ある人たちへの支援に集中して取り組む必要があります」「米国オリンピック委員会は『勇気ある人たちに重きを置く』存在であったでしょうか? ノーです。彼らはその時に何らかの意見を出しましたか? それが公平というものなのに」 と述べた。

 ブラックマンCEOは前日に発表した声明の中で「五輪ファミリーはこれらのアスリートを犠牲にした。こうした問題が二度と起きないように、これからも必要なあらゆる措置を講じていかなければならない」と語っていた。

■「アスリートが危険にさらされる」

 すでに児童ポルノ所持の罪で禁錮60年を言い渡されている54歳のナサール被告は、10件の性的暴行の罪を認めており、終身刑の判決を言い渡される見通しとなっている。

 2012年ロンドン五輪と2016年リオ五輪の女子団体で金メダルを獲得し、ロンドン五輪では種目別ゆかでも金メダルに輝いたレイズマンは、ナサール被告に対する最初の告発はリオ五輪の前だったと明かした。そして、理事の辞任が米体操連盟の大改革の序章であるべきだとしており、そうでなければさらに多くの選手がリスクにさらされると考えている。

「被害者は勇気を持って性的虐待の事実を申し出て、組織の対応の誤りを主張しました。その翌日、USOCは調査する意思がないと回答しました。(それどころか、米体操連盟の性的暴行に対する取り組みを評価しました。)」

「この一週間、被害者は勇気を出して凶悪な加害者と対峙(たいじ)し、彼女たちの痛々しいストーリーを公にしました。私を含め、その多くが米国オリンピック委員会にも過失があると主張しています」

「なぜたった3人の理事なのでしょうか? ほかの人たちは? 彼らは同じように間違った行為を許してきた人、または何が起きていたのかを把握さえもしていなかった人たちなのです」

「いずれにせよ、こういった辞任やほかの改革は何が起きたかを正しく知るまでは重要なことではありません。そうでなければアスリートが危険にさらされることを意味します」

「独自調査を!正しいことをするために必要なことは何でしょうか?」(c)AFP