【1月23日 AFP】地球を温める太陽光線の一部をそらすことを目的とする地球工学計画は、突然中止すると裏目に出る恐れがあると警告する研究論文が22日、発表された。結果として野生の動植物が絶滅に追い込まれ、生態系全体が破壊されるという。

 論文の共同執筆者で、米ラトガース大学(Rutgers University)のアラン・ロボック(Alan Robock)教授は「地球工学計画を停止した後の急激な気温上昇は、自然環境と生物多様性にとって非常に大きな脅威となると考えられる」と指摘する。

 米科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)」に発表された論文によると、50年間に進行する地球温暖化に相当する気温上昇分がほんの数年で元に戻ることで、多くの両生類、哺乳類、サンゴ類、陸生植物類が地域規模または地球規模で絶滅の運命をたどる可能性があるという。

 太陽光を対象にした地球工学「太陽放射管理(SRM)」では、太陽光線の一部を強制的に宇宙空間にはね返して地表温度を1~2度下げるために大量の微粒子を大気圏上層部に放出する。だが、この技術の実験はいまだに実施されていない。

 賛否両論を呼んでいるSRMの推進派は、すでに大惨事を引き起こし始めている危険な地球温暖化に対する安価な応急策をSRMが提供する可能性があると主張している。

 気温がこれまでに産業革命以前の時代に比べて1度上昇しただけで、世界はすでに破壊的な猛暑や干ばつ、海面上昇で激しさを増した暴風雨などの急増に見舞われている。

 米メリーランド大学(University of Maryland)のクリストファー・トリソス(Christopher Trisos)教授が主導した今回の研究では、太陽光を対象にした地球工学のシナリオをコンピューターモデルで検証した。

 モデルでは、年間500万トンの二酸化硫黄を2020年~2070年の50年間にわたり、赤道上の成層圏に飛行機で放散すると想定した。