【1月23日 AFP】ロシアの男子ショートトラックでスター選手として知られるビクトル・アン(Viktor Ahn)が、ドーピングで平昌冬季五輪への出場を禁止されたと22日の地元メディアで報じられた。国営タス通信(TASS)は関係者の話として、同選手が世界反ドーピング機関(WADA)が作成した報告書でロシアのドーピングスキャンダルに関与したとして、「五輪への参加を禁止された」と伝えている。

 韓国ソウル出身で現在は妻子とともにロシアに住んでいる32歳のアンは、ソチ冬季五輪で金メダル3個を獲得するなど、ショートトラック界で最も成功したスケーターとして知られており、ロシアが国家ぐるみのドーピング問題で国際オリンピック委員会(IOC)から選手団派遣を禁じられたことを受け、中立の立場として平昌五輪に参加する許可を求めていた。

 担当弁護士はロシアメディアに対し、アンはスポーツ仲裁裁判所(CAS)に不服を申し立てる十分な時間がないため、目前に迫った平昌五輪への出場を断念せざるを得ないとコメント。国内紙スポーツ・エクスプレス(Sport Express)の記事では、今回の決定が「予期せぬこと」であり、「出場停止処分の選手名は事前に把握していたが、そのリストにアンは含まれていなかった。CASは今週中にわが国の五輪選手の問題について審議することになっているが、アンには審理を受けるための十分な時間がないため、五輪を欠場することになる」と語ったと伝えられた。

 ドーピング問題でIOCから永久追放処分を受けているロシア選手の多くは、22日からCASへの申し立てを開始している。一週間にわたり行われる予定の審理には、複数の第三者機関による調査で国家ぐるみの大規模なドーピング違反にまみれていたとの指摘を受けた2014年のソチ五輪に出場したロシア選手39人からの訴訟が含まれている。

 アンが出場停止になったとされる報道について、IOCは「個人に関する権利を保護するため、われわれは個々の懸案についてコメントすることはできない。しかしながら、時期がくれば招待リストを公表することになる」と回答した。

 2006年トリノ冬季五輪で金メダルを獲得した元女子のショートトラック選手で、現在はロシア下院議員を務めているロスベトラーナ・ジュロワ(Svetlana Zhurova)氏は、アンが出場しない五輪など理解できないと主張しており、スポーツ・エクスプレス紙に対して、「今回の五輪は彼の生まれ故郷で開催されることから、ビクトル・アンがショートトラックの超目玉選手であることは間違いない。IOCは大会から主役を奪い去った」と述べた。(c)AFP/Alexandre FEDORETS