【1月22日 AFP】インドネシア・バリ島のクタビーチ(Kuta Beach)は、太陽と打ち寄せる波を求める観光客らのお気に入りの名所だが、近年、この輝く海岸線がごみの山に埋もれて消えつつある。

 ビーチでは、食品トレーやストローといったプラスチック製品が訪れる観光客の周りに散乱し、海の上でも波の背後に上下するサーファーらが、川や潮流に乗ってたどり着いた大量のごみと一緒に水面に浮いている。

 オーストリアから来たという観光客は「泳ぎたいと思ってもあまりきれいじゃない。常に大量のごみがある。浜には、海からひっきりなしにごみが打ち上げられてくる。本当にひどい」と苦言を呈した。

 地上の楽園と言われるインドネシアのこの休暇の島は、ごみ問題のためにありがたくないイメージが定着しつつある。

 1万数千の島々から成るインドネシアは、中国に次ぐ世界第2位の海洋ごみ排出国で、その年間総量は推定129万トンとなっている。

 河川と海洋に流れ込み氾濫する大量のプラスチックごみは、長きにわたり問題となってきた。都市の水路を詰まらせて洪水リスクを高めるほか、ごみをのみ込んだり絡まったりする海洋動物も後を絶たない。環境中のごみによって、こうした動物の命は日々失われている。

 問題があまりにも深刻化したため、バリ当局は先ごろ、海岸6キロを対象に「ごみ緊急事態」を宣言した。対象となったエリアには、ジンバラン(Jimbaran)、クタ、スミニャック(Seminyak)といった人気の場所も含まれた。当局は清掃員700人とトラック35台を投入して、毎日約100トンのごみを近くの埋め立て地に運んでいる。

 地元環境当局によると、バリ島のごみ問題は毎年のモンスーン季に最もひどくなるという。強風が海面のごみを海岸へと打ち上げ、また水かさが増した川では川岸のごみが海岸へと流される。当局者は「ごみはクタの住民や近隣地域からもたらされたものではない」とAFPの取材に説明した。

■責任は地元住民と観光客に

 インドネシアは、国連(UN)が推し進める、海洋を汚染するプラスチックごみの潮流を止める運動「Clean Seas」の参加約40か国のひとつだ。その取り組みの一貫として、インドネシア政府は海洋のプラスチックごみを2025年までに70%削減することを誓約。その中で、リサイクル事業の促進、プラスチックの袋の使用抑制、清掃キャンペーンの開始と国民意識の向上を計画している。

 それでもなお、2億5000万以上の人口を抱え、廃棄物処理のためのインフラが不十分なインドネシアが直面するごみ問題はやはりその規模が大きい。

 バリ・ウダヤナ大学(Udayana University)の研究者、イ・ゲデ・ヘンドラワン(I Gede Hendrawan)氏(環境海洋学)は、同島のごみ問題について、その責任が地元と観光客の両者にあると述べ、当局に問題解決のための予算を増やすよう訴えている。「バリ政府は、地元河川を大切にし、ごみを捨てないよう人々の意識を高める努力が必要。そのためにはより多くの予算を充てるべきだ。また中央政府もプラスチック包装を減らす運動を強化せねばならず、コンビニエンスストアなどで無料で提供されるレジ袋の禁止を進めるべきだろう」と語った。

 映像は、2017年12月6日撮影。(c)AFP