【1月18日 AFP】日本の気象衛星「ひまわり8号(Himawari-8)」の観測データを活用して天気予報の精度を向上させる可能性のある新システムを開発したとの研究結果を理化学研究所(Riken)が発表した。これにより、自然災害の発生前に当局が人命を救うための警報を早めに発することができる可能性があるという。

 厚い雲に覆われた地域の気象パターンをモデル化するために、ひまわり8号の「赤外放射輝度データ」を利用できるようにしたのは、このシステムが初。雲が厚い領域は通常、気象パターンのモデル化が困難と考えられているが、研究チームは、ひまわり8号の観測データと、理研のスーパーコンピューター上で動作するプログラムを組み合わせ、この難題を突破した。

 研究チームを率いる理研の三好建正(Takemasa Miyoshi)氏は、ひまわり8号から刻々と送られてくるようなビッグデータを処理して利用することは、これまでは不可能だったが、今では、天気の予測方法を向上させるためにこの種のデータを活用するシステムを構築できるようになったと語っている。

 今回のモデル化システムを用いると、気象学者らは雲の最上部(雲頂)の高度を測定できる。雲頂高度は風、気温、大気中の水蒸気量などを含むその他の因子を予測するために不可欠な情報だ。

 研究チームによると、このプログラムは極端な気象現象の発生時の予報精度を向上させる助けになる可能性があるという。ハリケーンや台風などの極端な気象現象の発生時には、従来の気象予報で使われている地上や空中の気象観測機器は信頼性が低下するか、利用できない可能性がある。だが、理研の研究チームが開発した今回のシステムは、宇宙空間から捕捉されるデータを使用するため、継続して機能すると考えられる。

 ひまわり8号からは10分間隔で最新データが送信されるため、このシステムで得られる最新画像を用いれば、地方当局が早めに避難警報を発令することが可能になるかもしれない。

 このシステムの強みは、自然災害が発生する可能性があるときに高精度の気象予測が得られ、この予測が常に更新される点にあると、三好氏は説明。高齢者や身体障害を抱えた人のように自然災害の被害を受けやすい人々については、自宅から避難しなければならない場合に十分な時間確保が望まれると、同氏は指摘している。

 日本の気象庁は今回のシステムを慎重に受け入れており、実用化の前に長期間の精度と潜在的な弱点を検証するための試験を重ねる必要があるとしている。

 理研の研究チームによれば、今回のシステムが従来の予測手法と比較してどの程度優れているかについては、まだ数値化できていない。

 同チームの研究論文は地球物理学研究の科学誌「Journal of Geophysical Research:Atmospheres」と米気象学会(American Meteorological Society)の学術誌「Monthly Weather Review」に掲載される。(c)AFP