【1月30日 AFP】編集者から「クレイジー・ホース(Crazy Horse)」の写真を撮りたくないかと聞かれたとき、私は全くちゅうちょしなかった。パリの伝説的なストリップ・キャバレーの舞台裏を撮影できる機会なんてそうあるものじゃない。

 

(c)AFP/Geoffroy Van Der Hasselt

 

 このクラブは初めてではなかった。数年前、パリに初めて来たときに僕はそこで働いていた。シャンパングラス片手にショーの開始を待つ観客たちの姿を撮影し、それを裏の部屋でショーの前半のうちにプリントし、幕間に売る仕事をしていたのだ。

 だからバックステージはよくうろついていたが、キャバレーの聖域中の聖域、ダンサーたちの楽屋には入ったことがなかった。今回の仕事で撮りたいと思ったのはそれだ。キャバレーの出し物自体が素晴らしい被写体なのは明白だ。けれど僕はこの魔法の向こう側、舞台裏に行ってみたかったのだ。

 

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 クレイジー・ホースはパリの名物だ。パリ中心部のジョルジュ・サンク通りに1951年に開店した。エッフェル塔(EiffelTower)や凱旋門(Arc de Triomphe)からも遠くない。

 創業者のアラン・ベルナルダン(Alain Bernardin)氏が、この場所にあった古いワイン貯蔵庫を購入。赤いチェックのシャツにカウボーイハットといったウエスタン風のクラブとして立ち上げた。ベルナルダン氏は北米先住民の戦士にちなんでこの店の名を付けた。数年後、同氏は店を高級ストリップクラブとして改装、今日に至っている。1995年にベルナルダン氏が死去してからは10年ほど3人の子どもたちが経営していたが、その後、売却された。

 

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 楽屋に行ってみて一番驚いたのはその狭さだった。部屋は二つあって、一つは出演の準備をする部屋で、3人用のテーブルや個人用の小さなスペースがあり、カーテンには家族や友人、ペットの写真がピンで留められていた。もう一つの部屋はリラックス用だ。巨大な半月型のソファがあり、女性たちがショーの合間にくつろげるようになっていた。

 

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 クレイジー・ホースのダンサーになる女性には一定の条件がある。まず体形的に厳しい基準があること。身長のような条件だけではなく、左右の乳首の間隔といった条件もある(ちなみにこれは21センチ未満とされている)。

 

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 ダンサーたちはとても歓迎してくれた。初めての撮影ではなかったから非常にくつろいでいて、おおらかで生き生きとしていた。1人だけ引っ込み思案のダンサーがいたが、それはおそらくロシアから1年前に来たばかりで、フランス語をよく話せなかったからだろう。

 撮影の間中、彼女たちはほほ笑み、笑い、その雰囲気が写真を通じて伝わっていればと思う。

 

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 彼女たちの大半はフランス人で、外国人も何人かいた。新入ダンサーは皆、クラシック・バレエを含む3か月の研修を受け、修了時にクレイジー・ホースのステージネームをもらう。マーサ・フォン・クルップ(Martha Von Krupp)、デッカ・ダンス(Dekka Dance)、エニー・グマティック(Enny Gmatic)、スターレット・オアラ(Starlette O’Ara)、トラウマ・ティーズ(Trauma Tease)といったステージネームだ。

 ダンサーたちは楽屋ではふざけて笑い合っているが、リハーサルになるとトレーニング・ウエア姿で振付師を囲み、極めて真剣だ。

 

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 舞台監督のスベトラナ・コンスタンチノワ(Svetlana Konstantinova)さんが飛ばす指示は完璧を要求している。ロシア出身の監督は同胞のダンサーたちのコミュニケーションも助けている。

 厳しい規律もこのキャバレー始まって以来の伝統の一部だ。10年ほど前のある晩、ショーの合間にディスコへ行った2人のダンサーが時間を忘れ、カーテンコールにいなかったとき、ベルナルダン氏は激怒したという。

 

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 私が会ったダンサーたちは、このクラブで働くことを心底気に入っていた。表現の機会が与えられるからだという。「私たちはソロでも踊るし、みんなでも踊る。それぞれ違った個性を示すチャンスがある。キャバレーでそういうことは珍しい」

 別のダンサーは、ステージではある種の「仮面」をかぶることができると私に言った。「私はすごくお堅くて、例えばビーチでトップレスになんかなったことはない。けれどここでは光と影に包まれていて、それを簡単にできる。ひわいなことなんて全くない。すべての演目には、ものすごい量のアートワークが注ぎ込まれている。ステージの上では別の人格になる。だからストリップをしているのは、私ではないの」

このコラムは仏パリを拠点に活動するカメラマン、ジョフロワ・ファンデル・ハッセルト(Geoffroy Van der Hasselt)がAFPパリ本社のヤナ・ドゥルギ(Yana Dlugy)記者と共同で執筆し、2018年1月12日に配信された英文記事を日本語に翻訳したものです。

 

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