【1月13日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が特定の国々を指して使用したとされる「shithole(シットホール=くその穴)」という言葉は、各方面から怒りの声を巻き起こしたのみならず、その翻訳方法をめぐって各国の報道関係者を悩ませた。

 各国メディアの報道を比較すると、直接的な訳から控えめな表現、そしてあからさまなえん曲表現まで、訳語選択の幅が驚くほど広いことが分かる。

■韓国「物乞いの巣窟」

 礼儀正しさで知られる日本のメディアはそろって、読者の気分を害さない表現を選んだ。NHKは「不潔な国々」を採用。英BBC放送の日本語版サイトは「肥だめ」、時事通信(Jiji Press)は「便所のような国」と表現した。

 韓国メディアの多くは、同国最大の通信社である聯合(Yonhap)ニュースに倣い、「物乞いの巣窟」と伝えた。

■台湾「鳥が卵を産まない」

 最も遠回しな訳語を選んだのは台湾の中央通信社(CNA)で、「鳥不生蛋国家(鳥が卵を産まない国家)」と伝えた。

 セルビアのメディアも、同じく自然界から借用した現地語の慣用句を用い、「オオカミが交尾する場所」と報じた。

■ベトナム「腐った」

 中には、この言葉にぴったり当てはまる表現が存在しないこと、そして発言の卑俗さから、適切な訳語選択に苦労する国もあった。

 ベトナムのメディアでは、「汚い国」「ごみの国」「腐った国」など、さまざまな程度の言葉が使われている。

 米国営ラジオ放送局ボイス・オブ・アメリカ(Voice of America)のタイ語放送は、「この英単語は『排せつ物の穴』と訳すことができ、彼(トランプ氏)が(これらの国を)低級と見なしていることを反映している」と解説した。

■中国「悪い国」

 中国共産党の機関紙・人民日報(People's Daily)の海外版は、「燗国家(悪い国家)」と翻訳した。

 一方、自国のロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領の暴言に慣れてきているフィリピンメディアは英語での報道が一般的で、フィリピン・スター(Philippine Star)紙は「shithole」という単語をそのまま見出しに使った。

■どの穴?

 国によっては、トランプ氏が言ったこの単語がいったいどの「穴」を指すのかについての解釈にばらつきが出た。

 ギリシャメディアは「掘込み便所」という表現を使った一方で、イタリアメディアは「尻の穴国家」と報道。オーストリアメディアは「ごみの穴」と伝えた。

 フランス、スペイン、ポルトガルでは、「穴」という表現自体がなくなり、「くそ国家」と訳されている。

■ベルギー「睾丸国家」

 全く違う体の部位を使った表現も登場した。ベルギーのフラマン語メディアは、現地語でよく使われる侮蔑表現を使い「睾丸国家」と翻訳した。

 その他、「世界の尻」(チェコ)、「汚い穴」(ドイツ)、「豚小屋」(ルーマニア)、「臭い穴」(ロシア)という訳もあった。(c)AFP/Roland LLOYD PARRY with AFP bureaus