【1月10日 AFP】兵員の減少に悩む英国陸軍は10日、感情面でのサポートを全面に打ち出した新兵募集キャンペーンを開始した。その一方で、政治的公正を無理強いしているとの批判も出ている。

 キャンペーンでは「軍隊で感傷的になってしまったら?」、「軍隊でも信仰を実践できるのか?」、「自分はスーパーヒーローでなければならないのか?」といったタイトルの短い動画がテレビやラジオ、ソーシャルメディアで紹介されることになっており、中には「軍隊では同性愛者でいられるのか?」というタイトルの広告動画もある。

 だが、兵士の主たる目的は戦うことにあるという事実を無視しているとして、キャンペーンに対して批判の声も上がっている。

 アフガニスタン駐留英軍の元司令官、リチャード・ケンプ(Richard Kemp)氏はBBCの番組で、「入隊に興味を持つ人々の主流は、自分たちの声に耳を貸してくれるのか、もし感傷的な問題が起きたら、といったことをそんなに心配していない」と指摘。

 またケンプ氏は、「彼らがより気にかけていることは、戦闘にどう立ち向かうのかということだ。それだけではない。彼らは戦いが持つイメージに魅了されるため、軍隊に入隊するのだ」と強調した。

 だが陸軍トップのニック・カーター(Nick Carter)大将はBBCラジオに対し、これまでの採用は白人の若者に頼っていたが、社会が多様化する中で彼らを獲得しにくくなったと指摘。

 「このキャンペーンは、率直に言って、現時点で十分な兵員を確保していないとの認識、およびわが国の人口統計が変化し、適切な才能を持った人員を軍に配置するため、より幅広いコミュニティーに手を伸ばす必要があることを意味している」と述べ、陸軍は「政治的公正の道を無理強いされている」とのケンプ氏による批判を否定した。

 英陸軍の昨年の正規兵の数は7万8000人強。2020年までに8万2000人に増員するとの政府の目標からかけ離れており、退役兵の数も新兵の数を上回っているという。(c)AFP