【1月5日 AFP】天然痘の痕跡を示す中世最古の感染例と考えられていたイタリアの子どものミイラについて、実際には天然痘ではなくB型肝炎に感染していたことが分かったとする研究論文が4日、発表された。最新のDNA分析で突き止めたという。

 米医学誌「PLOS Pathogens」に掲載された論文によると、この幼い子どもは16世紀にイタリア南部ナポリ(Naples)にあるサン・ドメニコ・マッジョーレ教会(Basilica of Saint Domenico Maggiore)に埋葬されたという。

 顔に明白な発疹の跡があることから、専門家らの間では当初、この子どもが天然痘ウイルスに感染していたと考えられていた。

 カナダ・マクマスター大学(McMaster University)の研究チームは、残留するDNAを検出するために少量の皮膚と骨の組織サンプルを用いた再調査を実施した。

 ゲノム解析の結果、子どもに感染していたのはB型肝炎ウイルスだったことが判明。肝臓を攻撃するB型肝炎ウイルスも、発疹を引き起こす可能性がある。

 マクマスター大の古代DNAセンター(Ancient DNA Center)の進化遺伝学者、ヘンドリック・ポイナー(Hendrik Poinar)氏によると、今回の発見は、B型肝炎ウイルスが数百年前から存在し、過去450年間にほとんど変化していないことを裏付けているという。

「過去に存在した主要病原体を特定するための助けとなる分子的アプローチの重要性を、今回のデータは浮き彫りにしている。これにより、主要病原体が人間に感染した可能性のある時期をより正確に推定することができる」とポイナー氏は指摘する。

「過去における伝染病の流行や拡大の動きへの理解が深まるほど、現代の病原体がどのように機能し、拡散する可能性があるのかを考えられるようになる。このような情報は、ゆくゆくは病原体の制御において有用となるに違いない」

 現在、B型肝炎は世界で約3億5000万人が感染しており、毎年約100万人の死者を出している。(c)AFP