【2月4日 AFP】コロンビアで行われている乳がん検診では、目の不自由な女性らによる触診が重要な役割を果たしている。鋭い感覚を持つ指先で乳がんを発見するのは特別な訓練を受けた全盲あるいは視覚障害のある女性ら5人だ。

 コロンビアでは乳がんが死因の上位を占めており、その死者は年間約2500人に上る。新たに乳がんと診断される人は毎年約7000人とされているが、この国で高性能の検査機器が使用されることはまれだ。

 視覚障害のある人が、乳がんの最初の兆候であることの多いしこりを発見する特殊な能力を持つことを発見したのは、ドイツ人医師のフランク・ホフマン(Frank Hoffman)氏。今から約10年前にこの能力を生かした触診法を提案した。

 サンティアゴ・デ・カリ(Santiago de Cali)のサンフアン・デ・ディオス病院で進められている「ハンズ・セーブ・ライブス(Hands Save Lives、手は命を救う)」プロジェクトでコーディネーターを務める外科医のルイスアルベルト・オラベ(Luis Alberto Olave)氏は「視覚障害のある人々はより鋭い感覚を備えている。触覚が鋭く、触った物の識別能力が高い」と指摘する。

 ここでは、触診で必要となる感覚を鈍らせる血管異常や神経障害のない25~35歳の女性5人が選ばれ、特別な訓練を経て触診検査アシスタントとしての資格を獲得している。以降、彼女たちは900人を超える患者の検査を行い、がんと同時に差別とも闘ってきた。

 網膜剥離を患い7歳で視力を失ったというコロンビア人女性のパパミハさんは、「『障害がある人には考えたり自分で何かをしたりすることができない』といった人々の誤った認識を、私たちは変えつつある」と話す。

 病院の医師たちは、視覚障害のあるアシスタントによる検査では、通常行われている検査よりも信頼できる結果が得られていると話す。オラベ医師はAFPに対し「彼女たちが行う臨床検査はより詳細な検査であり、より多くの時間を必要とする」と説明する。通常10分以内に終了する一連の検査ではあるが、この方法だと最長45分を要する。

 臨床試験の結果では、患者がセルフチェックを行った場合に発見できるしこりの大きさが15~20ミリ、医師では10ミリであるのに対し、視覚障害のある検査アシスタントらは、それよりも小さい8ミリのものも見つけられたという。