【1月4日 AFP】曲線的なコーナーにスタイリッシュなバルコニー、エキゾチックなモチーフが特徴の色鮮やかな建物が海沿いに建ち並んでいる。しかしここは米マイアミの有名なアールデコ地区ではない。インドのムンバイだ。

 かつて「ボンベイ」と呼ばれていたこの都市は、1920年代と1930年代に欧米を席巻した流線的なデザインのアールデコ様式よりも、19世紀のビクトリアゴシック様式の建築で知られる。

 しかし今、熱烈な愛好家たちが、住宅や商業オフィス、映画館、病院に至るまでムンバイに残る何百棟ものアールデコの建築物を有名にしようと取り組んでいる。

「アールデコ・ムンバイ(Art Deco Mumbai)」と名付けられたこの意欲的なプロジェクトは、市内のすべてのアールデコ建築を記録に収めて建物の由来を住民らに教え、保存することを目的としている。

 プロジェクト発起人のアトゥル・クマール(Atul Kumar)氏は、「ボンベイは世界でも有数のアールデコ建築を擁する都市。素晴らしい遺産だ」と語った。

 ムンバイのアールデコ建築は1930年代初頭から1950年代初頭に建設された。国内の富豪が建築家を欧州に送り、自国を植民地支配した英国の様式とは異なる現代的なデザインを習得させたことがきっかけだ。

 クマール氏によればムンバイのアールデコ建築は、鉄道の主要駅や博物館、高等裁判所など英国人が建設したビクトリアゴシック調の建築物の陰に隠れてきたという。

「しかしアールデコは引けを取らない。カラフルで鮮やか、自由で洗練されたスタイルで、新しい層の人々の意気込みが表現されている。インドは抑圧的な植民地支配下にあったが、これは建築を通した非常にユニークなメッセージだ」とクマール氏は言う。

 非営利で活動しているクマール氏らの少人数のグループは、ムンバイ全域にあるアールデコ建築を記録してグループのウェブサイト上の地図に載せ、その正確な数を初めて明らかにしようと精力的に調査を進めている。「優に200棟は超えるだろう」と言ったクマール氏は、最終的には300棟前後になる可能性もある、と付け加えた。