■目標はパンの大量生産を減らすこと

 英国ではすでにパン9.8トンを使って30万本以上のビールが生産されている。値段は1本当たり2.5~3ポンド(約380~450円)で、他の地ビールとほぼ同じ価格だ。

 環境問題の解決にとっては小さな一歩だ。だが、やるべきことはまだたくさんある。

「地球で起きていることを見ると、とても気がめいる」とスチュアート氏は話すが、それでも「この解決方法は素晴らしかった」と素直に喜びをあらわにする。ビジネスは急成長し、トーストエールは現在、米ニューヨークやブラジルのリオデジャネイロ、南アフリカのケープタウンでも醸造されている。

 パンからビールを造るスチュアート氏の製法はネット上で公開されており、これまでのダウンロード回数は1万6000回に達している。この製法を見れば、誰でもパンからビールを醸造する方法を学ぶことができ、食品の無駄を削減することにも貢献できる。

 スチュアート氏の目下の目標は、それぞれの地元で売れ残ったパンの提供源と協力しながら、世界中のどこのビール醸造者でもこのエールを商業生産できるライセンスを発行することだ。

 しかし、「フィードバック」の究極の目標は、パンの大量生産を減らすこと。スチュアート氏自身のベンチャー事業とは矛盾する。それでも同氏は「私たちのビジネスがなくなることが一番の望み」だと言い切る。「パンが捨てられることがない日が来れば、トーストエールが存在する理由はもはやなくなるのだから」 (c)AFP/Pauline FROISSART