【12月31日 AFP】2017年のスポーツシーンでは、ロシアが平昌冬季五輪への出場を禁止されたことが大きな注目を集めたが、それ以外にも、今年は汚職や違反がらみの出来事が続いた残念な一年だった。特にスポーツ界の重鎮にとって受難の年となり、特に大きな痛手を負ったのがサッカー界と国際サッカー連盟(FIFA)だった。

 グアムサッカー協会の元会長リチャード・ライ(Richard Lai)被告は、約100万ドル(約1億1300万円)の収賄で4月に有罪となった。コスタリカのエドゥアルド・リー(Eduardo Li)氏、グアテマラのブライアン・ヒメネス(Brayan Jimenez)氏、ベネズエラのラファエル・エスキベル(Rafael Esquivel)氏、ニカラグアのフリオ・ロチャ(Julio Rocha)氏はサッカー界からの永久追放を、ナイジェリアのアモス・アダム(Amos Adamu)氏は2年間の活動禁止を言い渡された。

 グアテマラサッカー協会の元事務局長、エクトル・トルヒーヨ(Hector Trujillo)被告は、FIFAの大規模な汚職事件で初めて実刑を科された人物となり、10月にニューヨークの裁判所で禁錮8か月の判決を受けた。12月には、ブラジルサッカー連盟(CBF)元会長のジョゼ・マリア・マリン(Jose Maria Marin)被告、パラグアイ連盟元会長のフアン・アンヘル・ナポウト(Juan Angel Napout)被告の2人も、1700万ドル(約19億円)以上の贈収賄で有罪となった。

 そのほかにも、欧州サッカー連盟(UEFA)元会長のミシェル・プラティニ(Michel Platini)氏、FIFA元事務局長のジェローム・バルク(Jerome Valcke)氏が、FIFAの活動禁止処分に対する異議をスポーツ仲裁裁判所(CAS)に却下されるなど、何人もの著名人がスキャンダルにまみれ、サッカー界の汚職をめぐる動きは拡大の一途をたどっている。

 フランス・リーグ1、パリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)のナセル・アル・ケライフィ(Nasser Al-Khelaifi)会長も、本人は否定しているものの、バルク氏に賄賂を渡していた疑いでスイスの検察当局の捜査対象となった。

■ロシアとムトコ氏にとっては悪夢の一年に

 ロシアのビタリー・ムトコ(Vitaly Mutko)副首相にとっては、悪夢の一年となった。世界反ドーピング機関(WADA)が主導した調査により、ロシアの国家ぐるみの薬物違反が発覚したことで、ムトコ氏は3月にFIFA理事選への出馬を拒否されると、国際オリンピック委員会(IOC)からは永久追放処分を受けた。

 ムトコ氏は、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の側近にとどまっているものの、WADAの下でロシアのドーピングに関する報告書を作成したリチャード・マクラーレン(Richard McLaren)氏は、ドイツ公共放送ARDの番組で、ロシアのサッカー選手が尿サンプルをすり替えてドーピングを隠していたと話している。

 国家ぐるみのドーピングが指摘されたロシアは、平昌冬季五輪の出場を禁止され、参加できるのは厳しい条件を満たし、薬物に手を染めていないと証明できた個人資格の選手のみとなる。母国開催のソチ冬季五輪で薬物違反を犯していたことが発覚した選手は43人にまで増え、ロシアは獲得した33個のメダルのうち13個をすでに失った。

■自転車界でも再びドーピングに注目が

 自転車ロードレースでも、今季のツール・ド・フランス(2017 Tour de France)とブエルタ・ア・エスパーニャ(Vuelta a Espana 2017)で同年2冠を果たしたチームスカイ(Team Sky)のクリス・フルーム(Chris Froome、英国)がドーピング検査で陽性となり、悪い意味で見出しを飾ってしまった。

 許容量の2倍に達するぜんそく薬「サルブタモール(Salbutamol)」が尿サンプルから検出され、違反が疑われる分析報告が返ってきたフルームは、現時点ではまだ処分は科されていないものの、無実を証明できなければ出場停止などを命じられる可能性がある。

 スカイ時代にツールを制したブラッドリー・ウィギンス(Bradley Wiggins)氏が、2011年に謎の小包を受け取っていた件の調査はようやく決着したものの、その矢先に現王者フルームのドーピング疑惑が浮上し、以前から薬物を「一切許容しない」方針を売りにしてきたチームにとっては信用が傷ついた一年となった。

 テニスでは、メルドニウム(meldonium)を使用して薬物違反による出場停止を受けていたロシアのマリア・シャラポワ(Maria Sharapova)が復帰したが、ライバルたちがこぞって不快感を示すなど物議をかもした。

 ユージェニー・ブシャール(Eugenie Bouchard、カナダ)は、シャラポワを「ペテン師」と呼んで永久追放を求め、キャロライン・ウォズニアッキ(Caroline Wozniacki、デンマーク)は、全米オープンテニス(US Open Tennis Championships 2017)でシャラポワが連日センターコートを割り当てられている点を批判した。

■汚職はサッカー以外でも

 汚職に話を戻すと、10月にはブラジルオリンピック委員会(COB)会長のカルロス・アルトゥール・ヌズマン(Carlos Arthur Nuzman)氏が、200万ドル(約2億2600万円)を使って票を買収していた疑いをもたれ、会長を辞任した。

 リオデジャネイロ五輪の招致をめぐっては、ほかに国際陸上競技連盟(IAAF)の元会長ラミーヌ・ディアック(Lamine Diack)氏と、その息子パパ・マッサタ・ディアック(Papa Massata Diack)氏も捜査対象となり、フランスとブラジルの当局が買収を証明するべく金銭の流れを追っている。2人はすでに賄賂を受け取ってロシアの選手のドーピングを隠ぺいしたことを認め、IAAFからは永久追放の処分を言い渡された。

 またこの件では、世界陸上を制し、五輪で計4個の銀メダルを獲得した元短距離のフランク・フレデリクス(Frankie Fredericks)氏が、パパ・マッサタ氏から30万ドル(約3400万円)を受け取った疑いでIOCとIAAFの職を追われた。(c)AFP/Barnaby CHESTERMAN