【12月23日 AFP】シリアの首都ダマスカスにあるコーヒーショップ「Zeriab」に飾られているクリスマスツリーには、ティンセルなどの飾りの代わりに、シンプルな電飾1つと、人々の希望と祈りが書かれた色とりどりの紙片が飾られている──。これらの小さな紙片につづられているのは、7年近く戦禍にあえいでいる人々らの願いだ。

 キャンドルがともされた温かい雰囲気の中、学生のソラフさん(25)はペンを取り、黄色い紙片に心からの願いを書いた。紙片には「強制避難させられたすべての友人が、できるだけ早く戻りますように」とあった。

 シリア人の大半はイスラム教徒だが、キリスト教徒も全体の約10%を占めるため、クリスマスは普通に見られる年次の行事だった。

 ダマスカスは、シリア国内の他都市にもたらされたような大規模な破壊は免れているものの、周辺地域で活動する反体制派の戦闘員らによるロケットや迫撃砲などを用いた攻撃がいまだに絶えない。同国では2011年3月に内戦が始まってから、これまで34万人以上が死亡し、500万人以上が国外に避難している。

 コーヒーショップでのツリーの設置は、シリア内戦の開戦から3年後に始まった。オーナーのベルナルドさん(39)は当時、クリスマスのお祝いがダマスカスから消えてしまったことを悲しんでいたが、そのうちに自らの店にツリーを飾ることで人々の喜びを取り戻せるのではと考えるようになったのだという。

「われわれは皆、戦争が終わり、すべてが以前のように戻ることを望んでいた。そのせいか、クリスマスツリーは『希望のツリー』へと必然的に変わっていった」

 ベルナルドさんの妻ラガドさん(29)にとって、愛する家族の安全は単なる望み以上のものとなっている。「わたしたちが日々求めているのは、(知り合いに)何も起きないこと、迫撃砲がやむこと、戦争が終わること…これは今や望みではなく、祈りです」

 結婚や行方不明の家族との再会、7年に及ぶ内戦がただの悪夢だったと知ることなど、店を訪れる人々がつづる願いはさまざまだ。国外からは、帰国を願う言葉も届く。

 オーナーのベルナルドさんの希望は、ここ何年も変わっていないという。「わたしの願いは、どの年も、どの瞬間も同じ。流血が終わること、まばたきをすると最後の停戦となっていること」

 そして「戦争が続く限り、このツリーを立て続ける。なぜなら、戦争の影で人ができる最小のことは、願うこと、想像することだから」と語った。17日撮影。(c)AFP/Maher al-Mounes