【12月22日 AFP】メキシコ・カリフォルニア湾(Gulf of California)に生息するニベ科の魚の一種「コルビナ」は、巨大な集団を形成する繁殖行動において、他の海洋動物の聴力を奪うほど大音量の「求愛音」を出すとする研究結果が発表された。

 研究チームによると、コルビナの雄の個体は、繁殖期に雌を誘うために「機関銃の大きな音」のような音波パルスを連続的に発するという。英国王立協会(Royal Society)の専門誌バイオロジー・レターズ(Biology Letters)に研究論文が掲載された。

 論文の共同執筆者で、米サンディエゴ大学(University of San Diego)のティモシー・ローウェル(Timothy Rowell)氏はAFPの取材に、何十万匹ものコルビナが年1回の産卵期に集合すると「その群れが発する求愛音の大合唱は、まるで観衆が競技場で歓声を上げているか、ハチの巣箱が大音響でうなっているかのように聞こえる」と語る。

「大合唱の騒音レベルの高さは、コルビナを捕食する海洋哺乳類の聴力を喪失させるほどに及ぶ」と、ローウェル氏は説明。永久的な聴力の喪失を免れたとしても、一定期間はその機能を失うだろうとした。

 ローウェル氏と共同研究者の米テキサス大学(University of Texas)のブラッド・エリスマン(Brad Erisman)氏のチームは、食用魚として人気の高いコルビナの繁殖期の鳴き声を調査するために、今回特殊な水中音響機器を使用した。

 コルビナの成魚は毎年春、唯一の繁殖地であるメキシコ・カリフォルニア湾(Gulf of California)最北部のコロラド川デルタ(Colorado River Delta)に移動する。科学者らが「集団産卵」と呼ぶこの繁殖行動のために集まるコルビナの数は数百万匹に達するともされている。

 通常はその1%足らずの個体数しか生息していないこの河口域には、あらゆるエリアからコルビナの成魚が集まる。繁殖期の数週間、ここはまさに興奮のるつぼと化す。

 雄のコルビナが発する求愛音は、漁船の船体に反響し、水面上にも聞こえるほど大きいため、それを聞きつけて漁師たちが集まってくる。論文によると、この期間には漁網1帖を備える漁船1隻で、約2トンのコルビナを数分以内に捕獲できるという。コルビナは成長すると体長約1メートル、体重12キロに達する。