【12月22日 AFP】ドイツ・ブンデスリーガ1部、ボルシア・ドルトムント(Borussia Dortmund)のチームバスが爆弾攻撃を受けた約8か月前の事件で、株価の不正操作で利益を得ようとしていたロシア系ドイツ人のセルゲイ・W(Sergej W)被告の裁判が21日に開かれた。弁護士は、被告が誰も傷つけるつもりはなかったことに加え、熱狂的なサッカーファンのいる地元ドルトムントでは公平な裁判が受けられないと主張している。

 今年4月11日に発生した爆破事件では、ドルトムントのチームバスの窓が割れて飛び散り、スペイン代表のマルク・バルトラ(Marc Bartra)が手首を骨折したほか、警察官が耳の内部を負傷した。28歳の被告は事件から10日後、欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League 2016-17)が行われる会場に向けてチームバスがホテルを出発した際、茂みに隠されていた3つの爆発物を遠隔操作で起爆させた疑いで逮捕された。

 起訴状によると、被告はこの襲撃によってプットオプションと呼ばれる取引ができるドルトムントの株価を急激に下落させ、利益を得ようともくろんでいたとされている。法廷では手錠をかけられ、青いシャツを着て黙ったまま席に座っていた被告の動機について、主任検察官は「私利私欲的なものだった」と指摘した。

■「金もうけの計画」

 当初この事件では、現場にイスラム教とのつながりを示す文書が見つかったことから、「聖戦(ジハード)」の疑いがあるとして捜査が行われていた。しかし、すぐにその信ぴょう性に疑惑が浮上し、勾留されていたイラク人男性も釈放されている。

 その数日後、警察は殺人未遂、爆発起動、悪質な傷害など合計28件の容疑で、電気工の男を逮捕。被告は事件当時、ドルトムントの選手と同じホテルに滞在しており、検察によると破片爆弾が爆発した現場を目撃していたほか、ドイツのサッカークラブで唯一株式が上場している同クラブの株を事件当日にプットオプション付きで購入していたとされている。

 検察によると、被告がもくろんだ金もうけの計画では「襲撃事件で選手が重傷を負ったり死亡したりすれば、同クラブの株が急激に下落することになっていた」とされている。被告は株の購入に約5万ユーロ(約671万円)のローンを組んだとみられているものの、事件の数日後に株を売却した利益はわずか5900ユーロ(約79万円)だったという。

 有罪が確定すれば、被告は終身刑に直面することになるが、ドイツでは通常15年後に仮釈放が認められる。次の裁判は来年1月8日に開かれることになっている。(c)AFP/Carsten HAUPTMEIER