■一人暮らしが増加、変わる社会

 みずほ情報総研(Mizuho Information & Research Institute)の藤森克彦(Katsuhiko Fujimori)主席研究員は、「日本では、家族が支えあいの非常に強い基盤になっています。家族が生活のさまざまなリスクに対応していくわけです」と語る。「それが今、一人暮らしが増えていることで変わってきています。家族の一世帯あたりの規模も小さくなっています。標準世帯が減り一人暮らしが増えています。大きく変わってきています」

 日本では過去30年間で一人暮らしの人が2倍以上に増えて全人口の14.5%に達した。この増加をもたらしたのは主に50代の男性と80代以上の女性だ。

 婚姻率も低下している。専門家は、多くの男性が身を固めて家族を持つには自分の仕事は不安定過ぎると恐れている一方、女性の就業が進むなかで、稼ぎ手としての夫をもはや必要としなくなったと指摘する。

 50歳の日本人男性の4人のうち1人が未婚だ。2030年までにこの割合は3人のうち1人に増えると予想されている。

■孤立

 日本には何かあった時には近所の人ではなく家族を頼るという傾向が強く、このことが問題をいっそう悪化させている。日本の高齢者は迷惑をかけたくないという思いからささいな手助けさえ近所の人には頼みたがらないため、交流の機会を失って孤立しがちだと藤森氏は説明する。

 日本政府の調査によると、週に1度しか会話をしない一人暮らしの高齢者の割合はスウェーデンでは5%、米国では6%、ドイツでは8%だが、日本では約15%だ。

 家族はますます遠く離れて暮らし、厳しい経済状況の下で高齢の親族を助ける余裕もない。

 藤森氏は、「(家族が)これまでの役割を担えなくなっているならば、それに対応できる社会を、枠組みをつくっていけばいいということです」と語り、増税して高齢者向けソーシャルケアの改善と保育への財政支援を行い、勤労世代の職場復帰を促すべきだと主張する。藤森氏は、現在の状況が続けば、一人暮らしの増加に伴って孤独死も増えると指摘した。